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崩(くづ)すが如(こと)くなるは語(かた)るに言葉(ことば)もなかるべし。爰(こゝ)に於(おい)て秀吉公(ひでよしこう)は前田徳善院(まへだとくぜんゐん)
玄以(けんい)。浅野弾正少弼長政(あさのだんじうやうせうひつながまさ)。増田右衛門尉長盛(ますだゑもんのぜうながもり)。石田治部少輔三成(いしだぢぶせうゆうみつなり)。長束大(ながつかおほ)
蔵大輔正家(くらたいふまさいへ)。を以(もつ)て五奉行(ごぶぎやう)と定(さだ)め。国家(こくか)の政(まつりごと)を司(つかさど)らしめ給へける。中(なか)にも浅野(あさの)
弾正長政(だんじやうながまさ)の妻(つま)は。秀吉(ひでよし)の御台所(みだいどこ)と腹替(はらがはり)の姉妹(あねいもと)たるがゆへ。最(もつと)も親(した)しみ深(ふか)く
して評議(ひやうぎ)相談(さうだん)の事(こと)。あるごとに内外(ないげ)を論(ろん)ぜず長政(ながまさ)これを預(あづか)り聞(きか)ずと云(いふ)
ふことなし。玄以(げんい)はまた信忠(のぶたゞ)の推挙(すいきよ)し給ふ人(ひと)にして。長束(ながつか)はその始(はじ)め丹羽五郎左(にはごらうざ)
衛門尉長秀(ゑもんのぜうながひて)につかへたりし人(ひと)なれども。其(その)評論(ひやうろん)何事(なにこと)も尋常(よのつね)の類(たぐ)ひにあらず。
智才(ちさい)に秀(ひいで)し者(もの)ゆゑに。此度(このたび)の列(れつ)に抜(ぬき)んでらる。増田長盛(ますだながもり)。石田三成(いしだみつなり)。両人(りやうにん)はもとより
秀吉公(ひでよしこう)の家(いへ)に伺候(しかう)して年久(としひさ)しく事(つかふま)つる者(もの)なれば。此列(このれつ)に加(くわ)はるなり殊(こと)に長政(ながまさ)
は。其性(そのせい)豪気(がうき)にして肝(きも)魂(たましい)人(ひと)にすぐれ。物(もの)ごとの利害(りかい)に能(よく)あきらかなる者(もの)なればと