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朝鮮王(てうせんわう)に書(しよ)を奉(ほう)じをはりぬれば。其後(そのゝち)禮曹判官(れいそうはんぐわん)の所(ところ)にして。朝鮮王(てうせんわう)より
饗宴(きやうえん)を賜(たま)はりける。酒(さけ)すでに酣(たけなは)なるの時(とき)に及(およ)んで。康廣(やすひろ)は腰付(こしつけ)の瓢簞(ひやうたん)【簟は誤】
より席上(せきじやう)に胡椒(こせう)を多(おほ)くとり散(ちら)して。これを甜(つ)み食(くら)ふを見(み)一座(いちざ)にありつる妓(ぎ)
女(ぢよ)ども。康廣(やすひろ)は隣国(りんごく)他家(たけ)の人(ひと)ぞとて遠慮(えんりよ)の心(こゝろ)。すこしもなく皆々(みな〳〵)これを争(あらそ)
ひて奪(うば)ひ合(あふ)たるは。さらに男女(なんによ)の礼儀(れいぎ)もたへ。興(けう)さめたる有(あり)さま放埓(はうらつ)なりし事(こと)
どもなり。康廣(やすひろ)すでに旅館(りよくわん)にかへりて通事(つうじ)の者(もの)に向(むか)ひ。打(う)ち嗟(なげ)いて語(かた)りける
は。汝(なんぢ)が国(くに)早(はや)く亡(ほろ)びん氣(き)の毒(どく)さよ。それ男女(なんによ)の禮(れい)あつて隔(へだ)つるは。これ人道(にんだう)の
くゝりたり。然(しか)るに今(いま)你(なんぢ)が国(くに)のやうを見(み)るに。上(かみ)にあるも下(しも)なる者(もの)も一様(いちやう)に色(しき)
慾(よく)のみたりをつとめとなし。網紀(かうき)の立(たゝ)ぬ所(ところ)あれば亡(ほろ)びずして。何(なに)をか待(また)ん自己(おのれ)
が云(い)ふところ辟目(ひがめ)にはあらじと云(いひ)けるを。後(のち)にぞ思(おも)ひしられたり。康廣(やすひろ)す