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鮮(せん)の辺(さかい)の氓(たみ)沙乙背同(しやいつはひどう)といへる者(もの)。国内(こくない)を逃亡(かけおち)して日本(につほん)の地(ち)に入(いり)やゝもすれば
倭(わ)の海賊(かいぞく)を導引(みちびい)て。寇(あだ)をなすにより朝鮮王(てうせんわう)の愠(いきとほ)り深(ふか)く此事(このこと)にある処(ところ)
なり。しかれば今(いま)の謀(はかりこと)に日本(につほん)に在(あ)る処(ところ)の朝鮮(てうせん)の叛民(はんみん)を擒(とりこ)とし。送(おく)りかへされ
なば通信(つうしん)の求(もと)めは早速(さつそく)に叶(かな)ふべきと。余所(よそ)ながら物語(ものかたり)なさしめける。義智(よしとも)聞(きゝ)
てそれこそ易(やす)き望(のぞみ)なるべけれとて。早速(さつそく)平調信(たいらのしけのふ)を日本(につほん)へかへらしめ。未(いま)だ数月(すげつ)
ならざるに悉(こと〳〵)く叛民(はんみん)の日本(につほん)の地(ち)にありける者(もの)。十四人まで生捕(いけどり)て朝鮮(てうせん)の王城(わうしやう)へ
来(きた)る。朝鮮王(てうせんわう)は仁政殿(じんせいでん)に出御(しゆつぎよ)なし大(おほい)に兵威(へいゐ)をそなへ。沙乙背同(しやいつはいどう)等(とう)を擒(とりこ)
ながら庭上(ていしやう)に引(ひき)すへ。委細(ゐさゐ)に彼者共(かのものとも)の罪悪(さいあく)をせめ問(と)ふに。其(その)白状(はくじやう)明(あきら)かに発(はつ)
する上(うへ)は。外(ほか)に再(ふたゝ)び詰問(なじりとふ)ことあらずとて。それより城外(しやうくわい)の常(つね)に刑罰([け]いばつ)をな
すの地(ち)に引出(ひきいだ)し。斬罪(ざんざい)して捨畢(すておは)るこゝにおゐて義智(よしとも)には。内厩(ないきう)の馬(うま)一