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動(どう)じでしらぬ行末(ゆうゑ)の風波(ふうは)をしのひて。見(み)も聞(きゝ)もせぬ人(ひと)の国(くに)へ怨(うら)みも起(おこ)
らぬ兵戈(へいくわ)を動(どう)じおもむかんことは。妻子(さいし)の難(なげ)き父母(ふぼ)の情(こゝろ)まで一々おもひ
つゞりみるほど。誰(たれ)一人の意(こゝろ)に宜(よろ)しとおもふべき満座(まんざ)の人々(ひと〳〵)さしうつむひて。
居(ゐ)たる許(ばかり)なり。斯(かく)ては上(かみ)の仰(おほせ)の御挨拶(こあいさつ)間抜(まぬけ)の仕(し)たる体(てい)に見(み)ゆる処(ところ)を。
徳川公(とくがはこう)しづかに仰出(おほせいだ)されて。是(これ)はめつらしき御沙汰(ごさた)にも御座(おはします)かな。一 段(だん)しかる
べうおぼへ候とある秀吉公(ひでよしこう)の御顔色(ごがんしよく)うるはしく見(み)へたるに。是(これ)につゞひて
高列(かうれつ)を出(いで)て申 上(あぐ)る旨(むね)あるは。加藤主計頭清正(かとうかずへのかみきよまさ)なり高声(かうしやう)にはり
あげて。偖(さて)も其昔(そのむかし) 神功皇后(しんかうくわうこう)の三 韓(かん)を攻(せめ)給ひしより。朝鮮(てうせん)は我国(わがくに)
の犬(いぬ)同前(どうせん)の定(あため)【ママ】にして。此方(こなた)の下知(げぢ)につき貢物(みつきもの)をも怠(おこた)りなく。年々(ねん〳〵)持参(じさん)
の筈(はづ)なるに。それさへ近代(きんたい)は其(その)沙汰(さた)を取失(とりうしな)ひ。につくひ仕形(しかた)に候あまつさへ