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人歩(にんぶ)を発(はつ)し道路(だうろ)を治(おさ)め。馳走饗應(ちそうきやうおう)の事(こと)のみを専(もつは)らに勤(つと)めとし。其(その)
他(た)の備(そな)ひ禦(ふせ)ぎの長(なが)き策(はかりごと)におゐては聊(いさゝか)もなかりけり。程(ほど)なく二将(にしやう)は巡見(じゆんけん)し
終(おは)りて立回(たちかへ)【囘は俗字】る。かくて四月も一日になれば砬(りつ)は柳相(りうしよう)の宅(たく)に来(きた)りて。私(わたく)しの雜談(ぞうたん)
におよべる時(とき)柳相(りうしよう)これに問(と)ふて曰(いは)く。倭兵(わへい)のこゝに到(いた)り来(きた)らんことさもあれ早(い)
晩(つ)の時(とき)にか。変(へん)あらん且(かつ)又(また)今日(こんにち)賊(ぞく)の勢(いきほ)ひ難易(なんい)如何(いかん)とかするや。事(こと)興(おこ)ら
ば貴公(きこう)此任(このにん)に當(あた)るべきの人(ひと)たり。其謀(そのはかりごと)いづれに出(いで)んと思(おも)ひ給ふぞと問(とい)ける
に。申砬(しんりつ)はなはだ是(これ)を軽(かろん)じ何(なん)の憂(うれひ)とするに足(た)らんや。さのみ心(こゝろ)を労(らう)し
給ふべからすと云(い)ふ。柳相(りうしよう)重(かさ)ねて左(さ)にあらず往(さき)には倭兵(わへい)但(たゞ)に短兵(たんへい)を頼(たの)み
とせしが。今(いま)は鳥銃(てつほう)長技(ちやうぎ)をとれり軽(かろ)〳〵しく見(み)るべからず。其上(そのうへ)我(わが)國家(こくか)
久(ひさ)しく昇平(しようへい)の安楽(あんらく)に住(ぢう)して。士卒(しそつ)の意(こゝろ)おそれて弱(しやく)なり事(こと)急(きふ)なるに