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船(ふね)を乗廻(のりまは)し半弓(はんきう)を射(ゐ)かくる事(こと)繁(しげ)く。なか〳〵近(ちか)つくこと出来(でき)ずおの〳〵
船(ふね)を引(ひつ)かへしける故。敵(てき)は勝(かつ)にのり日本舩(につほんふね)へ乗付(のりつけ)〳〵責(せめ)たりける。久留嶋(くるしま)
もつゞく味方(みかた)もあらざれば。命(いのち)かぎりと戦(たゝか)ふといへども。敵船(てきせん)より射出(ゐいだ)す
矢(や)は数(かす)しれす其身(そのみ)にあたりて。つゐに此所(こゝ)にて討死(うちしに)す。脇坂(わきさか)も今(いま)は最期(さいこ)と
おもひ。死力(しりき)を出(いだ)して戦(たゝか)ふといへとも敵(てき)の矢先(やさき)に射(ゐ)すくめられ。霎時(しはし)躇躕(ためらひ)【蹰は躕の俗字】
居(ゐ)るを見(み)て朝鮮勢(てうせんぜい)得(え)たりや応(おう)と。無二無三(むにむざん)に責立(せめたつ)る脇坂(わきざか)が兵共(へいども)散々(さん〳〵)に
なつて逃散(にげちつ)たり。安治(やすはる)今(いま)は是(これ)までなりと甲(かふと)をぬぎ太刀(たち)を抜(ぬき)船(ふな)ばたに腰(こし)
をかけ。近寄(ちかよる)敵(てき)を切払(きりはら)へ〳〵自害(じがい)せんとなしけるを。家老(からう)家(いへ)の子(こ)引立(ひつたて)て
こゝにて討死(うちじに)あらんはしかるべからず。一《割書:ト》先(まづ)陸(くが)へ上(あが)らせ給へ某(それがし)等(ら)残(のこ)りて討死(うちじに)
仕(つかまつ)るべしと諌(いさ)め。無理(むり)に抱(だ)き上(あ)げて陸(くが)の方(かた)へ漕戻(こぎもど)す。安治(やすはる)無念(むねん)の涙(なみだ)を