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なかせど詮方(せんかた)なく引(ひつ)かへす。朝鮮(てうせん)の兵共(へいども)勝(かつ)にのつて日本勢(につほんぜい)を追(おひ)まくる。
扨(さて)久留嶋出雲守(くるしまいつものかみ)が弟(おとゝ)。村上彦右衛門(むらかみひこゑもん)は外船(ほかふね)に有(あつ)て戦(たゝか)ひ居(ゐ)しか。兄(あに)の
討死(うちじに)を聞(きく)より涙(なみだ)をながし。今(いま)は生(いき)て何(なに)かせん討死(うちじに)して追付(おひつか)んと。家人(げにん)
をはけませ敵中(てきちう)へ真一文字(まいちもんし)乗入(のりいれ)ば。敵船(てきせん)より射出(ゐいた)す矢(や)は霰(あられ)の如(ごと)くなか〳〵
面(おもて)を向(む)くへきやうはなけれど。主従(しゆう〳〵)ともに討死(うちじに)と覚悟(かくこ)をきはめし事(こと)。すこしも
ひるます敵船(てきせん)へ漕付(こぎつけ)𨭚(しのぎ)を削(けづ)りて挑(いと)み戦(たゝか)ふ心(こゝろ)は剛(がう)にはやれども敵(てき)より射(ゐ)る
矢(や)におの〳〵深手(ふかで)を負(おひ)。既(すで)に斯(かう)よと見(み)へけるところに左馬助(さまのすけ)はるかに是(これ)を
見(み)て。角切角(すみきりかく)に三 文字(もんし)の船(ふな)じるしは。久留嶋(くるしま)が一 門(もん)なるべしあれ討(うた)すると
自身漕付(じしんこぎつけ)。打(うち)かきをもつてかけとめ是(これ)を救(すく)ふて攻(せめ)たゝかふ。此時嶋津義弘(このときしまつよしひろ)
手勢(てぜい)を下知(げぢ)して敵船(てきせん)を乗取事(のつとること)なかれ。只(たゞ)真中(まんなか)を乗(の)りてかなたこなたへ