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押詰(おしつめ)て擒(とりこ)にせんこと安(やす)からん併(しかし)ながら事(こと)明日(めうにち)におよんでは其路(そのみち)はるかに隔(へだゝ)
りて。追(おひ)つかんこと叶(かな)ふべからずせんずるところ。今夜(こんや)亥(い)のこく速(すみやか)に我兵(わがへい)を進(すゝ)めん
ずるぞ各々(みな〳〵)其覚悟(そのかくご)をなすべしと云(いひ)ければ家(いへ)の軍(ぐん)兵 尽(こと〳〵)く馬(うま)に草飼(くさかい)兵(ひやう)
粮(らう)をつかふて。急(きふ)に其 支度(したく)をとゝのひける。しばらくあつて清正(きよまさ)は庄林隼人(▢▢▢ばやしはいと)
助(すけ)を召(めし)て密(ひそか)に云(いふ)やう。最早(もはや)手の者(もの)どもは兵粮(ひやうらう)をつかひたるや馬(うま)の腹(はら)を
ばやしなひたるか。庄林(しやうはやし)答(こたへ)て御意(ぎよい)のおもむき亥(い)の刻(こく)とは承(うけたまは)れど疾(すて)に飼(かい)
足(あし)のかためまて。総(そう)人 数(ず)調(とゝの)ひ申(もふ)すといふに鍋島(なべしま)にも云合(いひあは)せず。清(きよ)正一手の人
数(ず)をもつて汗馬(かんば)に鞭(むち)を加(くは)へて追行(おひゆき)けるが爰(こゝ)に幸(さいわひ)なることありて折(おり)ふし
一人の朝鮮通事(てうせんつうじ)をとらへ得(え)たりける。其名(そのな)をは倭学通事(わがくつうじ)咸廷虎(かんていこ)
といふ者(もの)なり。是(これ)がことを知(し)るの委曲(つぶさ)なること。徳(とく)右衛門が類(たく)ひにあら