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んかたなし臨津(りんしん)といふ渡(わた)りに至(いた)り給へども。雨(あめ)はしきりに強(つよ)くなり。李㫟(りえん)は
これより船(ふね)に召(めさ)され。首将軍(しゆしやうくん)柳左相成龍(しりうさしやうせいりう)なんども舟中(しうちう)に侍(はべ)りける。既(すで)に渡(わた)りを
過(すぐ)る時(とき)は其日(そのひ)も暮(くれ)にかゝつて。物(もの)の色(いろ)をも弁(わきま)へず臨津(りんしん)の南(みなみ)の岸(きし)には王朝(わうてう)より。
兼(かね)てたてかまへたる役所(やくしよ)のありしを。賊兵(ぞくへい)の後(あと)より追(おひ)かけ来(きた)り材木(ざいもく)を取(と)り
はなし。桴筏(いかだ)なんどに組(くま)れては悪(あし)かりなんと恐(おそ)るれば。李㫟(りえん)は左右(さいふ)に命(めい)じ火(ひ)
を放(はな)ち。尽々(こと〳〵)く焼(やき)はらひ給ふ其(その)火光(くわくわう)江北(こうほく)まで照(てら)しゝかば。なか〳〵今(いま)のためにし
ては明松(たいまつ)の光(ひか)りとなつて。落行(おちゆく)路(みち)のまどひもなく其夜(そのよ)の初更(しよこう)ばかりには。稍(やうや)
く東坡駅(とうはえき)といふ処(ところ)に著(つき)給ふ。坡州(はしう)の牧師(ぼくし)許晋(きよしん)長湍府使(ちやうたんふし)具孝淵(くかうえん)等(ら)相(あひ)
集(あつま)り。かたの如(ごと)くに御《割書:ン|》厨(くりや)の設(まうけ)をまかなひ御膳(ごぜん)を調進(ちやうしん)したりしに。警衛(けいえい)扈従(こしやう)
の御《割書:ン|》供(とも)の上下(じやうげ)。終日(しふじつ)食物(しよくもく)をばはか〴〵しくしたゝめねば。甚(はなは)だ以(もつ)て飢(うゑ)たるゆゑ厨(くりや)