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翻刻
に多(おほ)くの艱難(かんなん)を經過(けいくわ)し。近郡(きんぐん)の敵兵(てきへい)を追討(おひうつ)ゆゑ清正(きよまさ)に後(おく)るゝ事(こと)。已(すで)
に十日におよびけるが。兵士(へいし)を急(いそ)がせ汗馬(かんば)に鞭(むち)を加(くわ)へて馳(はせ)けるほどに。五月廿
五日の午(うま)の刻(こく)ばかりに。鍋島(なべしま)が先手(さきて)清正(きよまさ)が陣所(ぢんしよ)に当着(たうちやく)す。つゞひて直茂(なほしげ)
も馳着(はせつき)二人の大将 対面(たいめん)あつて。いよ〳〵両手(りやうて)の兵(へい)を以(もつ)て朝鮮王(てうせんおふ)【ママ】《割書:并》に諸(しよ)
王子(おふし)【ママ】の行(ゆく)へを探(さぐ)り求(もとめ)んと。同月廿六日 両手(りやうて)の兵将(へいしやう)を促(うなが)し。それより廿
九日の晩(くれ)ほどに。永興府(えいこうふ)といふ所(ところ)に着(つき)たりけり。是(これ)ぞ俗(ぞく)に云(いふ)永橋(なかはし)なり此(この)
処(ところ)に高札(たかふた)をかゝげ臨海君(けもかいくん)。順和君(しゆんはくん)の両(りやう)王子 此道(このみち)より行啓(こうけい)なり忠義(ちうぎ)
をいだくの輩(ともから)早々(さう〳〵)人衆(にんず)を聚(あつめ)会(くわい)して供奉(ぐぶ)すべきの旨(むね)を書(しよ)し。太子(たいし)の
從臣(じふしん)金貴栄(きんきえい)が名(な)をしるす。清正(きよまさ)は此(この)高札(こうさつ)を取(とり)よせて美野辺金(みのべきん)
太夫(だいふ)といへる士(し)に。これを読(よま)せ大(おふ)に喜悦(きえつ)し両王子(りやうおふじ)はさすれば吾(われ)掌(たなごゝろ)