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会寧(ほねい)の吏(り)鞠景仁(きくけいじん)忽(たまち)ち意(こゝろ)かはり。多(おほ)く同類(とうるひ)をかたらひ謀反(むほん)の色(いろ)を顕(あら)
はし。府城(ふじやう)の内(うち)に逼(せま)りかこみ置(おき)使(つかひ)を清正(きよまさ)の陣(ぢん)へつかはし王子(わうじ)を生捕(いけど)りて
降参(かうさん)すべき旨(むね)を云(いひ)つかはしける。
清正(きよまさ)王子(わうし)を執(とらへ)情(なさけ)ある事(こと)
抑(そも〳〵)会寧府(ほねいふ)【注】と云ところは朝鮮(てうせん)の王城(わうしやう)よりは。北東(きたひかし)艮(うしとら)の方(かた)にあたり朝鮮(てうせん)の辺境(へんきやう)
たれば。我日本(わかにつほん)の八 丈(ぢやう)が島(しま)硫黄(いわう)が島(しま)の如(こと)くにして。遠流(をんる)の者(もの)も多(おほ)く入(いり)こむ所(ところ)な
れば。忠義(ちうぎ)の分(わけ)をもしらぬ輩(ともがら)なり今(いま)おもひもよらね大軍(だいぐん)押来(おしきた)りいまだ見(み)
も聞(きゝ)もせざる日本武士(につほんぶし)の。剛勇(こうゆう)なるに惧(おそ)れをなし鞠景仁(きくけいじん)をはじめとし。
不忠(ふちう)の心(こゝろ)を生(しやう)じ清正(きよまさ)が方(かた)へ使(つかひ)をつかはし。恩賞(おんしやう)をもとむかくて清正(きよまさ)は此使(このつかひ)
を得(え)て。大(おほい)に悦(よろこ)び恩賞(おんしやう)は。汝等(なんぢら)が望(のぞ)むことろにまかすべしと荅(こた)へられければ。府(ふ)
【注 305コマでは「ほれいふ」とある。】