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二十 余人(よにん)の勇士(ゆうし)を従(したが)ひて座(ざ)に著(つけ)は両王子(りやうわうじ)礼(れい)をなし給へば。清正(きよまさ)も礼拝(れいはい)し
拝荅(はいたふ)の式(しき)おはつて。供御(くご)を両王子(りやうわうじ)にそなへ奉(たてまつ)る諸大臣残(しよだいじんのこ)らず。是(これ)をもてなす
酒(さけ)すでに三 献(こん)におよびける時(とき)。清正(きよまさ)が臣(しん)等(ら)肴(さかな)を出(いだ)さんとて立(たつ)を見(み)て。王子(わうじ)の従(じふ)
臣(しん)等(ら)俄(にはか)に騒(さわ)ぎ立(たち)すはや王子(わうじ)を殺(しゐ)【「弑」とあるところ】し奉(たてまつ)るぞと心得(こゝろえ)て。半弓(はんきう)取(とつ)て矢(や)をつがひ
清正(きよまさ)を目(め)かけ射(ゐ)かけんとす。清正(きよまさ)おどろきこはいかにと制(せい)すといへども。言語(ごんご)
通(つう)ぜずなを〳〵近(ちか)よりければ清正(きよまさ)きつと心(こゝろ)づき伝(つた)へ聞(きく)。異国(ゐこく)には印章(ゐんしやう)を
与(あた)へて約(やく)をなすといふ事(こと)あり。是(これ)こそ大事(だいじ)のところなりと腰(こし)につけたる巾(きん)
着(ちやく)より。印形(ゐんぎやう)を取出(とりいた)し紙(かみ)へおして王子(わうじ)の従臣(じふしん)へ一 枚(まへ)づゝ与(あた)ければ。王子(わうじ)
をはじめ従臣(しふしん)等(ら)大(おほい)に安堵(あんど)し。半弓(はんきう)を捨(すて)て座(ざ)したりけるま事(こと)に危(あやう)き
事(こと)どもなり。清正(きよまさ)戦場(せんじやう)へ出(いづ)る事(こと)数(かす)しれずといへとも。今日(けふ)の如(こと)き危(あやう)きこと