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放(はな)ち少(すこ)しもひるむ気色(けしき)なきを。清正(きよまさ)の兵士はみな〳〵精兵(せいへい)卓然(たくぜん)たる者(もの)なれ
ば。鉄砲(てつほう)をきびしく下知(げぢ)して打(うち)かけさせ。火花(ひばな)を散(ちら)して攻戦(せめたゝか)ひいつ勝負(しようぶ)あ
らんとおもはれける時(とき)飯田角(いへたかく)兵衛といへる清正(きよまさ)の勇臣(ゆうしん)花色(はないろ)おどしの鎧(よろい)
を着(ちやく)し。頭(づ)なりに鹿(か)の角(つの)の前立物(まへだてもの)打(うつ)たる甲(かぶと)を頂(いたゞ)き。赤根(あかね)の陣羽織(ぢんばをり)を
着(き)て群集(むらがる)敵(てき)の真中(まんなか)へ。只(たゞ)一 騎(き)馳(はせ)入 大手(おふて)をひろげて駈巡(かけめぐ)り。手 當(あた)り次第(しだい)
に引(ひき)つかみ投付(なげつく)るゆゑ。是(これ)がために敵(てき)二三人づゝ打倒(うちたふ)され。狼破(うろたへ)まはるを味(み)
方(かた)の兵(へい)。どつと㗲(おめ)いて突(つき)入ゆゑ兀良哈人(おらんかいしん)つゐに戦(たゝか)ひやぶれて引退(ひきしりそく)を。清正(きよまさ)
その図(づ)をぬかさず追撃(おひうち)に進(すゝ)み行(ゆき)しに一 城(じやう)の地(ち)に押(おし)つめたるところ後(うしろ)は深山(しんざん)
を堅固(けんご)にとり。前(まへ)には濠深(ほりふか)く壘石(いしがき)を高(たか)くして。たやすく寄(よら)ん気色(けしき)もなし
清正(きよまさ)下知(げぢ)して会寧府(ほれいふ)の者(もの)に。手の者(もの)をさしそへ前(まへ)より攻(せめ)させ自(みづか)ら木(き)