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其長(そのたけ)八 尺(しやく)ばかりの大男(おほおとこ)にて。頬鬚(ほゝひげ)左右(さいふ)にわかち鉄(くろがね)の針(はり)をのべたるが如(ごと)くなる
が。両眼(りやうがん)大(おほい)にしてさながら鈴(すゞ)を張(は)るに異(こと)ならず。その声(こゑ)大鉦(おほどら)の如(ごと)くなるが喚(おめ)
きさけんで孫兵衛(まこべゑ)と。剣(けん)【劔は俗字】を合(あは)せ踊躍(おどりおど)つて斬合(きりあひ)たりしが。孫兵衛(まごべゑ)は元来(もとより)剣術(けんじゆつ)【劔は俗字】
巧者(こうしや)の早業(はやわさ)なれば。蝶(てう)鳥(とり)の如(ごと)く飛(とび)めぐり彼男(かのおとこ)の真向(まつかう)を。冑(かぶと)の上(うへ)より割(わり)
つけ鼻柱(はなはしら)まで切(きり)こんたるに。何(なに)かはもつてころぶべきうんと云(い)つて仆(たふ)れながら。持(もつ)
たる剣(けん)【劔は俗字】を孫兵衛(まこべゑ)に拋(な)げ付(つけ)たり。運(うん)の極(きは)めのかなしさは孫兵衛(まごべゑ)が。左(ひだり)の小脇(こわき)
に当(あた)り。痛手(いたて)なれば遂(つひ)にたまらず死(しゝ)たりける
一説(いつせつ)に意丹城攻(いたんじやうせめ)の時(とき)義太夫(ぎだいふ)。孫兵衛(まごべゑ)先陣(せんぢん)を争(あらそ)ひぬけがけして。敵城(てきじやう)へ
打入(うちい)らんとせし時(とき)。城内(じやうない)より雨(あめ)の如(ごと)く半弓(はんきう)を射出(ゐいだ)すといへども。両人(りやうにん)少(すこ)し
もひるまず打入(うちい)らんとせし時(とき)鉄木舌(てつほくせつ)といへる兀良哈人(おらんかいじん)駈出(かけいで)やにはに