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清正(きよまさ)安辺(あんへん)へかへる路軍(みちいくさ)の事(こと)
扨(さて)清正(きよまさ)はすでに兀良哈(おらんかい)の城塁(じやうるい)を攻墜(せめおと)し。朝鮮路(てうせんみち)に引返(ひきかへ)しけるが。其夜(そのよ)は川(かは)の
上流(じやうりう)に野陣(のぢん)を張(は)つて若(もし)又(また)狄人(てきじん)の後(あと)より追来(おひきた)る事(こと)もあらんかと。其用意(そのようゐ)を
なして待(まち)けるに。其夜(そのよ)は何(なん)の子細(しさい)もなく夜(よ)も明(あけ)ければ総軍(そうぐん)へ下知(げち)して押出(おしいだ)し。
すでに打立(うちたゝ)んとなしけるところへ。女真国(おらんかい)の者(もの)ども是(これ)を喰止(くひと)めんとやおもひけん。其兵(そのへい)
幾千万(いくせんまん)といふ数(かず)をしらず起(おこ)り来(きた)り。清正(きよまさ)の本陣(ほんぢん)へ無二無三(むにむざん)に衝(つ)きかゝるは。夥(おびたゝ)しき形(あり)
勢(さま)なり清正(きよまさ)も侮(あなと)るべき事(こと)にあらずと。自(みづか)らばれんの馬印(うましるし)を振廻(ふりまは)して下知(げぢ)し
けるに。幕本(はたもと)の士卒(しそつ)も手を碎(くだ)きこゝをせんどゝ戦(たゝか)ひける。清正(きよまさ)大音声(だいおんじやう)にて鳴(なり)わめ
き。首(くび)をば取(とる)な切(きり)すてよ組打(くみうち)するな太刀(たち)にて切(き)れと下知(げぢ)すれば。物(もの)なれたる士卒(しそつ)共(とも)
大将(たいしやう)の下知(けぢ)に勇気(ゆうき)をそへ。狄人(てきじん)を斬(き)り殺(ころ)すは青蕪(あをな)を刈(か)るが如(ごと)くにすれども。敵猛(てきまう)