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申硈(しんきつ)等(ら)この体(てい)を見(み)るより。実(じつ)に逃(にぐ)ると心得(こゝろえ)れば何(なん)の思案(しあん)もなく備(そな)ひを混(みた)
して追(おひ)かけたり。既(すで)に両山(りやうさん)相聳(あひそび)へわづかに一條(ひとすじ)の広路(ひろみち)ある所(ところ)を。はや五六 町(ちやう)ほども
行過(ゆきすぎ)ぬらんとおもふ時(とき)。兼(かね)て小西(こにし)が先(さき)だつて宗義智(そうのよしとし)と。己(おの)が舎弟(しやてい)主殿助(とのものすけ)木(き)
戸作右衛門(とさくゑもん)の三人 兵(へい)を二 手(て)となして。左右(さいふ)の山(やま)に伏兵(ふくへい)となつて隠(かく)れ居(ゐ)たるが。
今(いま)敵(てき)すでに此所(このところ)を過(すぐ)ると見(み)るより時分(じぶん)はよしと。貝金太鼓(かいがねたいこ)を一 度(ど)にならし
鉄炮(てつはう)の筒先(つゝさき)を揃(そろ)へて打(うち)かけ。左右(さいふ)より起(おこ)り一 手(て)は山路(やまぢ)の敵(てき)を後(うしろ)よりとゞめ。
一 手(て)は朝鮮(てうせん)後軍(ごぐん)のつゞくを立切(たちきつ)てこれを討(うち)。はじめ敗(はい)せし小西(こにし)が兵(へい)も頓(やが)
て備(そな)ひをもりかへし。朝鮮(てうせん)の兵(へい)を中(なか)に取(とり)こめ責立(せめたつ)れば。朝鮮勢(てうせんぜい)大(おほい)に驚(おどろ)き
崩(くづ)れ立(たつ)を。劉克良(りうこくりやう)はすこしも譟(さわ)がず馬(うま)より下(くだ)つて。吾死(わがし)すべきのところ
爰(こゝ)にありとつぶやきながら。矢束(やづか)を解(とい)て推乱(おしみだ)し弓(ゆみ)の弦(つる)噛湿(くひしめ)しさしとり