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向(むか)ふは大友(おほとも)黒田(くろだ)の両手(りやうて)の兵(へい)なり。江中(こうちう)の小島(こじま)に居(きよ)をなせる村民(そんみん)ども日本人(につほんじん)
の寄(よ)するを見(み)るより。慌(あは)て譟(さは)ぎ呼(よび)なげきて我先(われさき)にと落失(おちうせ)けり。李鎰(りいつ)は是(これ)
を見(み)るよりも。精兵(せいへい)の射手(ゐて)二十 餘人(よにん)をすぐりて早(はや)く島中(とうちう)に入(いれ)。これを速(すみやか)に射(ゐ)
立(たて)よと下知(げぢ)すれば。軍士(ぐんし)ども日本勢(につほんぜい)の猛勢(まうせい)なるに。おそれをなして進(すゝ)みかね
たりしかば。李鎰(りいつ)は大(おほい)に怒(いか)り憤勇(ふんゆう)の相(さう)をあらはし。腰(こし)なる剣(けん)【釼は俗字】をするりと
抜(ぬい)て一人を斬(き)らんとすれば。兵士(へいし)とも大(おほい)におどろき我先(われさき)にとすゝみ行(ゆき)。島上(とうじやう)に
駈上(かけあが)り矢先(やさき)を揃(そろ)へて。一 度(ど)に射立(ゐたて)すき間(ま)あらせず防(ふせ)ぎけるゆゑ。義統(よしのり)が先(さき)
手(て)の兵(へい)ども六七 騎(き)。馬(うま)より下(した)へ射倒(ゐたふ)されければ。日本勢(につほんぜい)も此勢(このいきほ)ひに辟易(へきゑき)
し。つゐに岸頭(がんとう)をば引退(ひきしりぞ)きたり。李鎰(りいつ)はこの一軍(ひといくさ)に勝(かち)を取(とり)たる心地(こゝち)して。弥(いよ〳〵)
兵士(へいし)をはげまして此所(このところ)を守(まも)りける。