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察(さつ)するに一人の日本(につほん)の兵卒(へいそつ)。江東(こうとう)の林木(りんぼく)の間(あひだ)より忽(たちま)ちあらはれ。又(また)乍(たちま)ち隠(かく)れて
遥(はるか)に城(しろ)のやうすを窺(うかゞ)ひしが。しばらくあれば同(おな)じく倭(わ)の兵(へい)二三人。跡(あと)よりつゞひて
あらはれ出(いで)。あるひは座(ざ)し或(あるひ)は立(たつ)てその意(こゝろ)安閑(あんかん)たる風情(ふぜい)をなすは。さながら行(みち)
路人(ゆくひと)の休足(きうそく)するに異(こと)ならず。柳成龍(りうせいりやう)は林世禄(りんせいろく)に対(たい)して。あれ御覧(ごらん)ぜよ倭軍(わぐん)よ
りさしつかはすところの斥候(ものみ)の者(もの)なり。日本人(につほんじん)の意(こゝろ)もとより巧(たく)み詐(いつは)り多(おほ)くして。大(たい)
兵(へい)後(あと)にありといへども。先立(さきたて)るに物見(ものみ)の者(もの)をもつて遠(とほ)くすゝませ。敵(てき)の動静(やうす)を窺(うかゞ)
はすに。その人数(にんず)二三人の間(あひだ)にすきず是(これ)を小物見(こものみ)といふといへり。若(もし)彼等(かれら)少(すこ)しき
兵(へい)とて敵(てき)の方(かた)に油断(ゆだん)すれば。後(あと)より大兵(たいへい)つゞき来(きた)りて攻撃(せめうつ)ことをなせりと。
かや。実(まこと)にゆるがせにすべからず。偏(ひとへ)に天朝(てんてう)の援兵(ゑんへい)を給(たま)はらんこと是(これ)願(ねが)ふところ
なりと。憂(うれ)ひ訟(うつた)ふれば林世禄(りんせいろく)もこれを最(もつとも)と同(どう)じ。急(いそ)ぎかへりて天朝(てんてう)に訟(うつた)んと