← 前のページ
ページ 361 / 451
次のページ →
翻刻
相備(あひそなひ)となし征東使(せいとうし)が籠(こも)りたる。島鶏館(とうけいくわん)といへる山(やま)へ押寄(おしよす)る此時(このとき)兀良哈人(おらんかいしん)
月縁(げりす)といふ者(もの)。伯寧(はくねい)が催促(さゐそく)によつて兵(へい)を引(ひい)て島鶏館(とうけいくわん)へ来(きた)りけるが。今(いま)日(につ)
本勢(ほんぜい)の押(おし)かゝるを見(み)て。横合(よこあひ)よりかゝり来(きた)る清正(きよまさ)が家老(からう)。加藤与左衛門(かとうよざゑもん)黒(くろ)
革威(かはおど)しの腹巻(はらまき)に。中二段(なかにだん)紫糸(むらさきいと)にておどしたる大袖(おほそで)つきの鎧(よろひ)を着(ちやく)し。刃(は)
渡(わた)り一 尺九寸(しやくくすん)の菊(きく)一 文字(もんじ)の長刀(なぎなた)を取(とつ)て。手勢(てぜい)二百人 余(あま)りを下知(げぢ)し向(むか)ひ合(あは)せて
突(つき)かゝる。兀良哈人(おらんかいじん)半弓(はんきう)をきびしく射(ゐ)かくるゆゑ。味方(みかた)の兵(へい)すゝみかねて見(み)へたり
ける時(とき)。赤星太郎兵衛(あかぼしたろべゑ)手勢(てぜい)を引(ひい)て馳来(はせきた)り。此体(このてい)を見(み)るより鉄砲(てつほう)を四五十 挺(てう)
つるべ打(うち)に放(はな)ちかくれば。先(さき)に進(すゝ)みし兀良哈人(おらんかいじん)三十四人やにはに打倒(うちたふ)され。色(いろ)めき立(たつ)
て見(み)へけるに。加藤勢(かとうぜい)得(え)たりや応(おう)と無二無三(むにむさん)に突(つき)かゝる故(ゆゑ)。つゐに追立(おひたて)られ引退(ひきしりぞ)
く其中(そのなか)より。大将(たいしやう)月縁子(げりす)は矛(ほこ)を打振(うちふり)取(とつ)てかへし戦(たゝか)ひけるが。加藤与左衛門(かとうよさゑもん)は