← 前のページ
ページ 381 / 451
次のページ →
翻刻
日(か)の東雲(しのゝめ)に老翁山(らうおうざん)を打越(うちこし)て。狼川(らうせん)さして押寄(おしよす)る。黒田(くろだ)が勢(せい)大(おほい)におどろきて
敵(てき)の有(あり)さまを見(み)てけるに。李時言(りじげん)が四万 余騎(よき)の軍勢(ぐんぜい)。大浪(おほなみ)のわくが如(ごと)くに押(おし)
来(きた)る。黒田勢(くろだぜい)はわづか二千七百 余騎(よき)にて。此大軍(このたいぐん)に蒐合(かけあは)せべきやうなければ。早(はや)く
長政(ながまさ)へ注進(ちゆうしん)なして援兵(ゑんへい)を乞(こは)んと。衣笠因幡(きぬかさいなば)。黒田惣右衛門(くろだそうゑもん)。など相談(さうだん)なして連(れん)
状(じやう)をしたゝめ。早走(はやはし)りの者(もの)五人を撰(ゑら)み出(いだ)し。此状(このじやう)を葛原(かつげん)へ持参(ぢさん)すべしと命(めい)じ。
けるが。未(いま)だ栗山備後(くりやまびんご)。後藤又兵衛(ごとうまたべゑ)。の両人勢(りやうにんせい)の手配(てくば)りを下知(げぢ)して居(ゐ)たるゆゑ。
印形(ゐんぎやう)をすへざれは。栗山備後(くりやまびんご)の方(かた)へ連状(れんじやう)を持(もた)せつかはし。印形(ゐんぎやう)すへらるべしと云(いは)せ
ければ。備後(びんご)承知(しようち)せりとて其状(そのじやう)を開(ひら)き見(み)るに。
急度(きつと)注進(ちゆしん)仕(つかまつり)候 敵(てき)夜中(やちう)に川(かは)を越(こし)此方(こなた)の陣所(ぢんしよ)へ取懸(とりかゝ)り申候 間(あひだ)
少々(しやう〳〵)御人数(ごにんず)出(いだ)され後詰(ごづめ)《振り仮名:被遊可被下|あそばされくたさるべく》候 恐惶謹言(きやうくわうきんげん)