← 前のページ
ページ 408 / 451
次のページ →
翻刻
に一 文字(もんじ)に陣(ぢん)を張(はり)たるは。紅白(こうはく)の旗旌(きせい)をたてつゝけたり。その備(そなひ)の内(うち)よりも十
余(よ)の馬武者(うまむしや)を出(いた)して。羊角島(ようかくとう)の方(かた)に向(むか)つて江中(こうちう)に乗(のり)入。馬(うま)の太腹(ふとばら)の没(した)るばかり
に成(なり)ぬれば皆々(みな〳〵)轡(くつばみ)を扣(ひか)へ。馬(うま)の首(かしら)を双(なら)べまさに渡(わた)らんとするの勢(いきほひ)をぞ示(しめ)しける
その余(よ)の兵士(へいし)も江上(こうじやう)に馬(うま)を乗(のり)入。勇威(ゆうい)をしめす体(てい)なるは。是(これ)ぞ乃(すなは)ち小西(こにし)黒(くろ)
田(た)等(とう)の手(て)の者(もの)なり。かゝる所(ところ)へ小西(こにし)が陣(ぢん)より又(また)六七人の兵士(へいし)鳥鋭(てつほう)【銃の誤ヵ】を打(うち)かたげ
て江辺(こうへん)に到(いた)ると見えしが。城(しろ)に向(むか)つて放(はな)ちたてたるその響(ひゞ)き忽(たちま)ちに雲雷(うんらい)
の起(おこ)るが如(ごと)くなり。さしもに広(ひろ)き大江(たいこう)を打越(うちこえ)て大 同館(とうくわん)の内(うち)に入(いり)。屋瓦(おくくわ)の上(うへ)に
落散(おちち)ること其間(そのあひだ)幾(いく)百 間(けん)といふことなし。或(あるい)は城楼(しやうらう)の柱(はしら)に中(あた)つて深(ふか)く入(は[い])ること
五六寸に至(いた)れるは。其数(そのかず)しらぬことどもなり。其中(そのうち)に緋縅(ひおどし)の鎧(よろひ)を着(ちやく)せる武者(むしや)
一 騎(き)。中(なか)にもすぐれて其術(そのじゆつ)を得(え)たりと見(み)へたるが。遥(はるか)に練光亭(れんくわうてい)の上(うへ)を望(のぞ)み朝(てう)