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此有(このあり)さまを見(みる)につけ人心(じんしん)の合(かな)へるところを知(しる)がゆゑ。所々(ところ〳〵)へ移文(ふくらしふみ)【注】を廻(まは)し功(こう)ある者(もの)
をば賞(しよう)すべし。早(はや)く來(きた)つて大明(たいみん)の兵(へい)の待受(まちうけ)に其(その)支度(したく)をつとむべしと。触(ふれ)を廻(まは)し
たりけるに其(その)令(れい)を聞(きく)の民人(みんじん)。何方(いづく)より集(あつま)るともしれず方々(はう〳〵)より馳来(はせきた)り。争(あらそ)ひ出(いで)
て柴(しば)を荷(にな)ひ草(くさ)を刈(か)り室屋(しつおく)の造作(ざうさく)し。釜鍋(かまなべ)の類(るひ)まで調(とゝの)へ設(まう)けたりけるゆゑ。
数日(すじつ)を経(へ)ずして凡(すべ)ての事(こと)を弁(べん)じたり。柳成龍(りうせいりやう)はこゝにおゐて其功(そのこう)あるを点検(てんけん)し。
彼(かの)帳面(ちやうめん)に其(その)労力(らうりよく)の次第(しだい)を追(おつ)て書記(かきしる)し又(また)乱離(らんり)にあへるの民人(みんじん)急(きふ)に調(とゝの)へかたし
とおもふが故(ゆゑ)。たゞ至誠(しせい)の理(り)を尽(つく)し彼等(かれら)が意(こゝろ)を暁(さと)し諭(さと)して。つかひければ一人の者(もの)
をも鞭打(むちうつ)ことなくして。自己(じこ)の下知(げぢ)に相(あひ)したがつて定州(ていしう)の地(ち)までに至(いた)る。かゝる処(ところ)へ
洪宗禄(こうそうろく)も。またこと〳〵く亀城(きしやう)の人(ひと)を催促(さいそく)し馬(うま)の豆(まめ)粮米(らうまひ)をはこばせ。定州(ていしう)
の地(ち)嘉山(かさん)に到(いた)るもの遂(つゐ)に二千 余石(よこく)に及(およ)べり。かくても猶(なほ)安州(あんしう)以後(いご)の粮米(らうまい)迄(まで)も
【注 「めくらしふみ」の誤ヵ】