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けるに大濤(おほなみ)山(やま)を崩(くづ)すが如(ごと)く。大水(たいすい)忽(たちま)ち漲(みなき)りて高麗(こま)の兵卒(へいそつ)万 人(にん)をこと〳〵
く底(そこ)の藻(も)くずとなしたりける。残(のこ)りし者(もの)ども乱(みた)れ立(たつ)て漸(やうや)くに船(ふね)を廻(めぐ)らし逃(のが)れ
行(ゆく)ゆゑ。皇后(くわうごう)の神兵(しんへい)は全(まつた)き勝(かち)を得(え)たりける。新羅王(しんらわう)は手合(てあはせ)の一戦(いつせん)に利(り)を失(うしの)ふのみ
ならず。我(われ)日本(につほん)の神兵(しんへい)の大軍(だいぐん)なるに驚(おどろ)きおそれ。遂(つひ)に我陣前(わがぢんぜん)に降参(かうさん)して命(めい)を請(こ)
ひ。すなはち誓(ちかつ)て申やう。今(いま)より後(のち)日本(につほん)へ貢物(みつぎもの)の舟(ふね)楫(かぢ)の乾(かは)く間(ま)なく。毎年(まいねん)に
郡(くに)の内(うち)の宝物(ほうもつ)は申に及(およ)ばず。男女(なんによ)奴婢(ぬひ)の数(かず)をそへて是(これ)を調進(てうしん)すべし。たとへば
朝(あした)の日(ひ)は西(にし)より出(いで)て河水(かすい)返(かへつ)て逆流(けきりう)し。地(ち)の石(いし)曻(のほつ)て天(てん)の星辰(せいしん)に連(つらな)れる世(よ)はありと
ても。春秋(はるあき)の朝貢(てうこう)は闕(か)き惰(おこ)たれる事(こと)はあらじと。頭(かうべ)を叩(たゝい)て佗(わび)申す茲(こゝ)において。
皇后(くわうこう)は新羅王(しんらわう)の降(かう)を納(い)れ免(ゆる)し。其(その)科(とが)をなだめ給へける。其国(そのくに)に伝(つた)ふる文書(ふんしよ)の
類(るひ)をば尽(こと〳〵)く取収(とりおさ)め給へけるとなり。新羅王(しんらわう)の方(かた)よりは其国(そのくに)の至宝(しいほう)の数(かず)を撰(えら)み。