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のしれざれば嫗(うば)が始(はじめ)て櫝(ひつ)をとり上(あぐ)る時(とき)。この兒(ちご)ことともに鳴鵲(なくからす)あり則(すなは)ちこれ
によりて鵲(からす)の字(じ)の声(こゑ)と。形(かたち)と借省(かりはぶき)て昔氏(せきし)と名乗(なのら)らせたり。また其櫝(そのひつ)を解(とく)
の義(ぎ)をとり。その名(な)を脱解(だつかい)と呼(よ)んたりける。生計(すきのひ)のなき儘(まゝ)に漁釣(ぎよてう)の業(わざ)を在(し)
ならつて。老嫗(らうば)をやしなひしが常(つね)に怠(おこた)る色(いろ)もなく嫗(うば)はある時(とき)この兒(こ)に向(むか)ひ。你(なんが)
が骨相(こつさう)を見(み)るに。凡人(ぼんにん)に殊(すぐ)れて類(たぐ)ひまれなる者(もの)と知(し)る。克(よく)く学文(がくもん)をつとめ
て功名(かうみやう)を立(たつ)るならば大(おほい)に立身(りつしん)すべきなりかまへて其身(そのみ)を疎(おろそ)かに持(もつ)べからずと。教(きやう)
訓(くん)すれば脱解(だつかい)遂(つひ)に学文(かくもん)を専(もつは)らに勤(つと)めたる中(かな)にも。地理(ちり)の吉凶(きつきやう)に通(つう)じたり
爰(こゝ)に楊山(やうざん)の瓠公(こゝう)とのへるが宅地(たくち)を見(み)るに。其吉祥(そのきちじやう)の地(ち)なるをかんがへ此地(このち)を借(か)り
て居住(きよぢゆう)せり。瓠公(こゝう)はもと日本人(につほんしん)と聞(きこ)へたり。其後(そのゝち)に南解王(なんかいわう)は脱解(だつかい)ばが賢徳(けんとく)あ
るを聞(きく)より。その愛寵女(むすめ)を以(もつ)て脱解(たつかい)を婿(むこ)にとり。南解(なんかい)が死(し)せるとき遺(ゆゐ)