翻刻
もおさんどのも御坊(おぼう)さんも吾儘子(だゞつこ)も
産(うまれ)たまゝの客(すがた)にて憎(おし)ひ欲(ほ)しいも西(にし)
の海(うみ)へさらり無欲(むよく)のかたち也 欲(よく)垢(あか)
と梵脳(ぼんのう)とあらい清(きよ)めて浄湯(おかゆ)を
浴(あび)れば旦那様(たんなさま)も権助(ごんすけ)も孰(どれ)がどれやら
同(おな)じ裸身(はだかみ)仏(ほとけ)きらいの老人(としより)茂(も)風呂(ふろ)へ
這(はい)れば吾(われ)しらず念仏(ねんぶつ)題目(だいもく)申もあり
向(むかふ)不見(みず)の侠客(いさみきゃく)も裸(はたか)になれば前(まへ)を
おさへて己(おのれ)から恥(はぢ)をしり猛(たけ)き武士(ものゝふ)の
あたまから湯(ゆ)を掛(かけ)られても人 込(ごみ)じゃ
と堪忍(かんにん)を守(まも)り柘榴口(ざくろくち)をくゝる時(とき)
は御免(ごめん)なさひと屈(くゞ)るのは是(これ)洗湯(せんとう)