翻刻
安穏の地ではないと云ふ事を遠に達観した人もあった位である
《第四 移住の鳥島》
イ.移住の起因
明治三十六年四月鳥島の硫黄坑が俄かに爆発した一時は其勢どが□にすさま
しく澤丸黒子の一孤島は今に粉□せんとする状況を□した其燃烈の状は眞に
筆や口で言ふ事も書く事も出来ない極であった其實況を見た島の人々は老若
男女の区別なく喧々□々と騒ひで安堵する心はなかった不安の念は日一日と
加り□泣する者もあった爆発の報告は鳥島役場より郡役所を経て縣聴に達し
た縣□は更に内務省に致した縣よりは参事官岸本賀昌郡役所よりは郡長齋藤
用之財汽船□□丸にて出張し内務省参事官坂仲輔農災稼防調査□員山崎直方
は政府派遣の軍艦高千穂号に衆じ視察の為に鳥島へ出張し□艦は知事の上申
に□り萬一の場合に島民を非難せしむる為じ派遣せられるといふ大騒ぎにな(24)
った(高千穂号は大正三年七月十七日青島征討不幸にして戦没す)
震災隊防□委員山崎氏の調査報告によれば是以上災害の惨状を□する虜はな
いが数年間毎に亦爆発は免れぬとの事であった夫で島民現在の生活状況と島
の生産物の状態より観察する時は適當なる土地に移住し永遠に萬全の策を乗
るに若かずとの意見は期せずして出張各官の意見が悉く一致した
ロ.移住の勧誘
出張各官の意見も悉く一致したる故先以て移住の勧誘を島長國吉清勤書記國
吉昌勤に謀かった両人は一も二もなく直に大に其議に賛成したので速かに島
民大會を開く事とした而して之を協議せしめたが全會一致ではないが多数は
移住を得策として其議に賛成した因りて之を決行するにも何等差文はなかっ
たが由来本件の如きは事件其もの性質が多数に頼り決行するのは得策でなひ
故に先□者有志の移住を是とする人々に□りて移住の主旨を其反對者に説示(25)