翻刻
【右丁】
沙汰ニも不被及釣候魚ヲハ四辻之魚市有之所江
持出し賣申候光陰ヲ送り罷在候或日又五右衛門
儀彼僧躰之人「シンハレカ」方江被雇参り候処「シヨレン
と申て法談之よふなる事有之其群集之
中ニ而五右衛門と呼ひ其方ハ此方ヲ見忘たるやと
被申候間見申候処「フイチセル」ニ而御座候間《割書:此フイチ|カルといふ》
人ニ被助候舩之舟主なりいかで見忘れ可申哉
命之親にて候ものをと最前之礼謝を申述】
重助病死ヲ語り候処殊之外愁歎之躰にて我等の
【左丁】
水主いたし候「キヤフンカコシ」と申者此度鯨舩ヲ
仕立日本近邊江送り可申心得ニ候処早壱人者なき
人ニ成り扠こそ悪悲しく故郷恋敷思ら
め重助事は詮方無シ萬次郎ハ我等故国に
罷在素末なる扱にても無之無恙之間氣遣
ひ申間敷扠三人傳蔵五右衛門寅右衛門ヲいふ
申合急き帰国之用意致べしと念頃に
申同道して彼濱辺江参り家居ヲ見分
し眉ヲ蹙しか傳蔵居合出しける桶ニ腰ヲ掛