翻刻
【右丁】
釣取り是ヲたへ夜ヲ明し翌十四日一同憤發
いたし碇綱おしきり舩板抔ヲ以漕寄候磯の岩ニ
ふれ當り舟は破損仕候ニ付五左衛門壱番ニ磯江
飛上り覚へす草つかみごへ申候續て一同嶋
に揚候得共人之住へき所には無之様相見
岩各ニ茅篠なと生茂り候之みニて如何ニもす
べきよふなくこゝかしこと見廻り候処東之方
相覚候處の磯ニ而洞穴を見付先是ヲ起臥の
處と相定メかの藤九郎と申鳥多く居候ヲ
【左丁】
礫ニ而打殺シ給罷在候水は岩間ゟ滴り候ヲ最前
舟破損の砌波に打揚候桶壱ツヲ持て取溜或
者雨を受是ヲ飲居申候身ヲ投死んと存候時も
御座候得共亦思ひ返し生るゝたけハ生く
べし抔申日ヲ送り申候無程夏之氣候に
相成候時分かの藤九郎鳥次第ニ少なく相成
磯より上江這揚り飛去り候間或日五左衛門万次
郎打連れ上り嶮岨ヲ攀三四町程登候処
廣き平地有之石をたゝミたる古井御座候此