翻刻
【右丁・挿絵】
曽我兄弟
【左丁】
一 悪(あし)きと思(おも)ふ事(こと)は一々(いち〳〵)人前(にんぜん)にて容易(やうい)に出来兼(てきかね)る
事(こと)斗(はか)りなり夫(それ)を忍(しの)びかくして其方(そのほう)へは心(こゝろ)を尽(つく)し
力(ちから)を用(もち)ひ悪(あし)き事(こと)は悪きと知(しり)なから隠(かく)し忍(しの)びて己(おのれ)が
身命(しんめい)にも及(およ)ぶことをしらずして兎角(とかく)横道(よこみち)へいりて直(すくなる)
道(みち)を行(おこなは)ずある歌([う]た)に
直(すく)に行(ゆく)道(みち)と思へと横(よこ)にゆくあしまの蟹(かに)のあしと思ひそ
是(これ)直(なほ)すべき道(みち)を直さぬ大(だい)の不了簡(りやうけん)といふべし