翻刻
【右丁】
一 学問(かくもん)は何(なに)の為(ため)にする事ぞと我心(わかこゝろ)に問時(とふとき)は己(おのれ)か心(こゝろ)をみ
かく為(ため)にすると合点(かつてん)ゆくべきを然(しか)るに孝弟忠順(かうていちうじゆん)
に身(み)を入(いれ)ずして偏(ひとへ)に博覧(はくらん)に身(み)を入(いれ)世間(せけん)を眼下(めのした)に
見 下(くだ)し能(のう)に誇(ほこる)の徒(と)あり是(これ)心得違(こゝろゐちかひ)なるべし子(こ)に教(おしゆ)る
輩(ともから)油断(ゆたん)あるへからず
【左丁】
一 物(もの)は都而(すへて)古来(こらい)より有ふれたるものかよきをたま〳〵人(ひと)
並(なみ)に違(ちか)いたるものを好(この)む人(ひと)あり夫(それ)世間並(せけんなみ)の物(もの)を用(もち)ゆれば
他人(たにん)の眼(め)にも立(たゝ)ずむつかしからざるにとかく新規(しんき)の物(もの)数(す)
寄(き)或(あるひ)は流行物(りうかうもの)を用(もちい)んと思ふはあさはかなる事(こと)也(なり)
日本(につほん)祖徠翁(そらいおう)出(いて)て朱子学(しゆしがく)をそしり一端(いつたん)世(よ)に行(おこなは)るゝと
いへとも稍(やゝ)百年(ひやくねん)過(すき)ざるに又(また)朱子学(しゆしかく)にかへり歌人(かしん)契仲(けいちう)
真淵(まふち)宣長(のりなか)等 出(いて)て一端(いつたん)地下(ぢけ)にひろまるといへども今(いま)いく
はくもへずして又(また)其(その)已前(いぜん)の風(ふう)にかへるこれみな異様(ことやう)
成(なる)ことの一端(いつたん)はやる習(なら)ひにてすたるも又はやし学問(がくもん)書画(しよくわ)
なともすへて今(いま)世(よ)に唐画(たうくわ)と唱(とな)ふるは享保(きやうほう)の来伯(らいはく)に
沈南蘋(ちんなんびん)といふ花鳥家(くわてうか)来(きた)りて珍敷(めつらしき)写真(しやしん)を書出(かきいた)