翻刻
【右丁・挿絵】
柔術(やはら) 取手(とりて)
【左丁】
先(さき)の刀(ちから)【力ヵ】を以て此方(このはう)の高名(かうめう)にする業(わざ)なり故(ゆへ)に柔術(やはら)とは名(な)
付(つけ)たるなべし是も諸流(しよりう)多(おゝ)し気(き)の落着(らくじやく)を第(たい)一とす
取手(とりで)
取手(とりて)は先(さき)の人(ひと)を取終(とりおふ)する工夫(くふう)也 夫故(それゆへ)其手(そのて)を受(うけ)人(ひと)も我(われ)を
ねらふと覚悟(かくこ)を極(きわ)め胸(むね)を居(すへ)て居所(ゐところ)を能(よく)見定(みさため)飛込(とびこん)で
取術(とるじゆつ)故(ゆへ)に柔術(やはら)とは似(に)て表裏(うらはら)也 手足(てあし)のおさへどころ胸(むね)腹(はら)
の中所(あてところ)其人(そのひと)に応(おゝ)して為業(なすわざ)故にゆるかせならさる芸(けい)也
古来(こらい)名人(めいしん)は己(おのれ)に一倍(いちはい)も大なるもの取終(とりおゝ)せたる輩(ともから)枚挙(まいききよ[ママ])す
べからず此術(このじゆつ)も名人に至れば無理(むり)なることなふして其術(そのしゆつ)にい
たるは養生の一ッ也