翻刻
【右丁】
○温泉(おんせん)は熱過(あつすき)す又ぬるからず色(いろ)清潔(せいけつ)に臭気(しうき)なきよし
○とことなく色(いろ)変(かわり)たる温泉(おんせん)は必(かなら)ず毒(どく)のあるとしるべし
○温泉に塩気(しほけ)のあるはまゝあれど余(あま)り辛(から)きは毒湯(どくたう)としれ
○温泉は打身(うちみ)金瘡(きんさう)湿(しつ)ひぜん中風(ちうふう)しびれ不叶(ふかない)によし
○冷症(ひへしやう)の女は能(よき)温泉(ゆ)こゝろみて程(ほと)よく入は子(こ)も孕(はら)むなり
○虚症(きよしやう)なる人は必(かなら)す湯治すな心気(しんき)疲(つかれ)て内分(ないふん)がへる
○湯治こそ容易(ようい)にせされ二三日 試(こゝろ[み])てから其(その)うへていれ
○湯治 中(ちう)大酒(たいしゆ)飽食(ほうしよく)房事(ばうじ)せば其(その)せんなくて内(うち)を損(そん)する
○湯治 場(ば)は多(おほ)く山中(さんちう)海辺(かいへん)ぞ湯(ゆ)さめに風邪(かせ)の用心(ようしん)をせよ
○湯治には空腹(くうふく)ならず大酒(たいしゆ)せず倦迄(あくまて)食(くわ)ず身(み)をこなすよし
【左丁】
○湯治 場(ば)は遊山(ゆさん)の人(ひと)の多(おゝ)ければ夫(それ)にうかれて不 養生(ようじやう)すな
○湯治場て大雨(たいう)大雷(たいらい)するならば快晴(はれゆく)迄(まて)は見合ていれ
○温泉(おんせん)も極熱湯(こくねつたう)は心せよ毒(どく)もするをくけがも危(あやう)し
○温泉を容易(やうい)に呑(のむ)な心(こゝろ)せよ平水(へいすい)よりもえて毒(どく)が有(ある)
○湯治して相応(さうおう)せしと思ふとも三廻(みまは)り入るを《振り仮名:限|□□》とはせよ
高山(かうざん)
○高(たか)き山(やま)深(ふか)き林(はやし)の神社(じんしや)へは虚弱(きよやく)の人(ひと)は怖(おそる)べきなり
○山道(やまみち)は常(つね)の里(り)すうにかゝはらず暮(くれ)ぬ中(うち)にそ宿(やと)を定(さだめ)よ
○山坂(やまさか)は立場(たてば)も茶屋(ちやや)も遅速(ちそく)あり能々(よく〳〵)聞(きゝ)て夜道(よみち)をばすな
○深山(しんざん)は雲(くも)霧(きり)迄(まて)もするとにて邪気(じやき)や湿毒(しつとく)多(おほ)きとぞしれ