翻刻
なき事なり若(もし)振舞(ふるまひ)等(など)の節(せつ)にても過食(くはしよく)過酒などは
すまじき事なりふかく心得/慎(つゝしむ)べし食物の養生にて
天然の寿命を延(のば)し長寿の仕やうあり天然の寿命
に強弱(きやうじやく)長短(ちやうたん)ありて天より相応(さうわう)の御当飼(おあてがい)ありたとへば
御上(おかみ)より臣下(しんか)へ遣(つか)はさるゝも役(やく)の髙下(かうげ)により知行(ちぎやう)に
大小あるかごとく幼稚(やうち)にて育(そた)たぬものあり百/歳(さい)より長(なか)
生(いき)の人もあり是を平均(へいきん)して凡人(およそひと)一代を五十歳と見て
食物も通例(つうれい)のはたらきの人/平均(へいきん)して凡日に四合ヅヽ
くらゐなり是を天禄として一年に壱石四斗四合となる
なり五十年には七十弐石也是を日々に大食すれば
天禄を喰縮(くひしゞ)めるゆゑ天寿を闕(かい)て短命(たんめい)となる
亦(また)小食(しやうしよく)【注】して喰 延(の)ばせば天寿を延し長寿となる
これ女(め)の子(こ)算(ざん)にてすこしも疑(うたが)ふ処にあらずしかれども
日に三/度(と)の定食の外(ほか)に間(あひ)の食を過(すご)し大酒など
を慎(つゝし)まず心の養生身の養生あしければ女の子算
用大きに間違(まちが)ふべし能々(よく〳〵)守りつゝしむべし天
禄を喰(くひ)延し長寿の女の子算左のごとし
壱人分一日の飯米(はんまい)四合ヅヽにしては
五十年の天禄高七十弐石也
三/合半(かうはん)ヅヽにすれば 五十七才余を保(たもつ)
【注 「しょうしょく」の表記は「小食」・「少食」が有ります。筆勢から「少」の最終画と「食」の第一画の合字かとも思われますが、「小」かもしれず悩ましい。】