翻刻
家屋敷(いへやしき)にても人も住(ぢう)せずに/空家(あきや)にておき火も焼(た)
かず掃除(さうぢ)もせず建具などのたて明(あけ)もせざれば風も
通(とふ)らず湿(しけ)まはりて早く腐(くさ)りあるひは虫(むし)ばみなどして
のちには修復(しゆふく)にも掛(かゝ)りがたきが如(ごと)し只(たゝ)長生(ちやうせい)の為(ため)には
毎朝(まいあさ)早く起(おき)て衣類(いるい)着(き)かへて程(ほど)よきくらゐ労動(ろうどう)す
るが薬なりかくのごとき考(かんがへ)もなく只(たゝ)欲(よく)のために身(み)に
不相応(ふさうわう)の重荷(おもに)を持ち角力(すまふ)を取あるひは慰(なぐさめ)の為(ため)に
格別(かくべつ)の重(おも)き物を力(ちから)持などをするものゝ長命(ちやうめい)なるは
少(すくな)きを見るべし殊(こと)に耳目(じもく)口鼻(こうび)形(げう)の慎(つゝし)みなく女色(ぢよしよく)に
淫(ふけ)りなどして天然の寿命を保(たもた)ざるは親(おや)先祖(せんそ)へ甚(はなはた)
以て不 孝(かう)なり能々(よく〳〵)慎(つゝしみ)て天寿を傷ふ事なかれ
食養生(しよくようしやう)
食物は腹八分(はらはちぶ)といふ事/尤(もつとも)なりされども腹八分をよく
守り天然の寿を保(たも)つ人すくなし人々/生(うま)れ付に/強(つよ)きあり
弱(よは)きあるは天然にて人力(じんりよく)の及(およ)ばぬ所なれども其人(そのひと)相(さう)
応の食養生せば其人の天寿を保つべし食物は
命(いのち)をつなぐ第一なれば用(もち)ひやう大(おほ)きに心得(こゝろえ)あるべき也
命をつなぐは五穀(ごこく)なれども過(すぐ)れは却(かへつ)て毒となるたとへは
田畑(でんはた)にもこやし過(すぐ)ればかるゝがごとしいはんや慰(なぐさめ)のために
美(び)食をこのみ大食大酒などして命を損(そん)ずるは勿体(もつたい)