翻刻
くさ木のおのがさま〴〵といふがごとく天より命(めい)ぜらるゝ
ところの性(せい)は平等(びようどう)一/枚(まい)なれどもうくる方の分限(ぶんげん)
ほどに請(うく)るなればその分限に過不及(くはふぎう)のなきやう
に守(まも)り行(おこな)ふを性にしたがふこれを道(みち)といふその
過不及(あまりたらず)のなきやうにとは聖賢(せいけん)のをしへによるに
しくはなし是(かく)の如(ごと)きの道理(だうり)をよく〳〵しり弁(わきま)へ
て守(まも)り行(おこな)へば銘々(めい〳〵)分限の天寿(てんじゆ)を保(たも)つべし
天寿といへば寿命(じゆめう)の長短(ちやうたん)は定(さだま)りたるものにて
延(のび)も縮(ちゞみ)もならぬものと思(おも)ふ人多しそれは道理(だうり)
にくらきなり然(しかり)といへども三十歳天寿/請(うけ)しもの
何(なに)ほど養生(やうじやう)すとも八十歳までも長寿(ちやうじゆ)するものに
あらず三十歳の天寿(てんじゆ)を四十才か五十才までは養
生の仕やうにて延(のぶ)るなり先(まづ)第一の養生には天の命と
いふ事をよく〳〵合点(がてん)すべきなり天の命(めい)をいふは
上(うへ)より下(しも)へ下知(げぢ)あるを命といふたとへば爰(こゝ)に君あつて
臣(しん)に何事(なにごと)によらず命ぜらるゝに大役(たいやく)には大禄(たいろく)を
あたへ小役には小禄をあたへ給ふがごとく性(せい)の厚薄(かうはく)に
天禄(てんろく)にも厚薄あり性の厚(あつ)きは有(ゆう)徳の明智を
うけて根気力量(こんきりきりやう)もつよく寿命(じゆめう)もながく食(しよく)禄も
多(おほ)し性のうすきは其裏(そのうら)にて智も浅く根気力