翻刻
量(れう)もよはく短命(たんめい)にて食禄(しよくろく)もすくなし此ゆゑに幼(よう)
少(しやう)にてそだゝぬものあり長生(ながいき)するものあり人々/天然(てんねん)の
寿命(じゆめう)は人力のおよぶところにあらずされども養生の
仕やうをしらざれば長生(ちやうせい)すべきものも短命(たんめい)なるもの
多(おほ)し短命(たんめい)なるべきものも長生(ながいき)するものあり養生を
せず天寿を殤(そこな)ひ短命(たんめい)なるほど父母(ふぼ)へ不孝(ふかう)なるは
なし養生の仕様(しやう)に三つの品ありその一ツはこゝろの
養生また一ツは身の養生又一ツは食事(しよくじ)の養生也
心(こころ)の養生
心の養生は意(こゝろざし)を誠(まこと)にし心を正(たゝし)ふせよといふ事(こと)を
暫(しはらく)もわすれず能々(よく〳〵)守るべしこれ長生の術(じゆつ)なり心は
一身の主(あるじ)なる故/体(からだ)は家来(けらい)のごとく心は心の徳を失
たれは耳目口鼻(じもくこうひ)に私(わたくし)なし心の徳を失(うしなは)ざるやうは心
を公(おほやけ)にすべし心を公にすとは自己(じこ)一分の身勝手(みがつて)を
せず天理(てんり)の当然(とうぜん)に随(したが)ふをいふ天理の当然に随ふ
とは何事(なにこと)によらず一念心(いちねんしん)の発(はつ)する所の己(おのれ)が心をお
さへて先祖(せんぞ)と親(おや)の心をこゝろとすれば心/広(ひろ)く体(てい)ゆ
たかにて天寿をよく保(たもつ)べしかくのごとくせず心の
徳をうしなへは耳目口鼻(じもくこうび)に我(わが)まゝありて日々夜々(にち〳〵やゝ)に
寿命をちゞめ短命(たんめい)となるさて又心づかひほど寿