翻刻
命(めう)のどくはなし心(こゝろ)づかひせぬがよしといふ人/多(おほ)し至極(しごく)
尤(もつとも)なりしかしなから心づかひする性分(しやうぶん)は心づかひせまじ
とおもへば猶(なほ)心づかひなり尤心づかひに弐ツの品あり
何程(なにほと)心づかひしても天理(てんり)の当然(とうぜん)を守(まも)れば寿命(じゆめう)を
縮(ちゞむ)るものにあらず天理の当然を守らず己(おのれ)が身勝
手の心づかひをすれば天の憎(にく)み給ふ所にて寿命を
ちゞめ短命(たんめい)なる事/氷(こうり)を火にあぶるがごとし恐(おそ)るべし
つゝしむべし
身(み)の養生(やうじやう)
身の養生には根気(こんき)八分といふ事をよく守るべし根
気八分(きはちぶ)といふは銘々(めい〳〵)うまれ付の根気力量(こんきりきりやう)の八部を
用(もち)ひて十分の根気力量を用ひざるなりたとへば重(おも)さ拾
貫目を持(もつ)ほどの力あらば八貫目を持て十五貫目もつ
程(ほど)の力あらば拾弐貫目を持ち弐拾貫目持ものは
拾六貫目もちて道(みち)を歩行(あゆむ)も一日に十里/歩行者(あるくもの)
は八里にて泊(とま)り十五里/行(ゆく)ものは十二里弐十里の
ものは十六里にし此外(このほか)万年根気力量を十分に遣(つか)
はずに無理につかふは血気(けつき)を傷(そこな)ふて寿命(じゆめう)の毒(どく)なりさり
ながら体(からだ)をつかふのみ毒のやうに思ふは心得(こゝろえ)ちがひなり逸(いつ)
居(きよ)して身体(志んたい)を倦(うま)すは甚(はなは)だ寿命の毒なり譬(たとへ)は