翻刻
【右丁】
の奥はしりぬ使度々に及へ共更にそのもよほしに随は
ずさらはさないはせそ人々の見こらしにからめとつて
参らせよやとて軍兵をさしむく忠興か妻家人等に
防き矢射させみつから十歳になる男子八才になりし
女子をさし殺し家に火かけさせて自害す奉行
等案に相違しなましゐなる事仕出し諸大名を
内府の方人になしおほせて詮なしとてこれより後
人質とるへき沙汰におよはす此上は細川か城攻落せとて
丹波但馬の軍勢をさしむくしかるへき兵をは引すく
つて忠興具して奥へ下るおとなしきものともに
【左丁】
つはもの少々つけて豊後の国へ下りて杵築の城を
守る丹後には藤孝入道に年老たるといとけなき者とも
はかり残り居てはか〳〵しく軍すへきもの多からすされ
とも入道さるふるつはものにてすこしもさわく色なく
宮津の城を経て田辺の城にたてこもりかたき遅しと
待居たり抑此入道と申すは弓矢打物とつて堪能なる
のみにあらすしらぬ小芸にたに達せすといふ事なく
天下双なき多才多能の人也けり中にも敷島の道に
ふかくすきて古今和哥集の秘訣悉く此人に伝れり
されは此度我身うち死したらん後此道長く絶なん