翻刻
【右丁】
城中の人々からき命いきてけり 此日嘉明か手にうつ
とる首一千三十五とそしるされたり《割書:此事は大明の書には|正月三日のやうに記せる也》さる
ほとに人々西生海に会合して僉議すそも〳〵蔚山
の城敵の地にふかく入てみかたの城々をさる事とをく
兵粮の運漕も おたやかならす たゝ彼城をこほちて
東は此西生海を以てかためとし西は順天の城をすてゝ
南海を守らんにはしくへからすと議定す 太田飛騨守
一吉毛利民部太輔高政二人此義に同せすさらはまつ
此由をしるして殿下にまいらせ 御裁断を 仰へしとて
人々皆連書す左馬助嘉明一人署を加へす毛利
【左丁】
壱岐守勝信を 始て人々色々にすゝめしかとも嘉明更
に承引せすやゝあつて申けるは人々は連書して参らせ
給はんに嘉明一人名を書せさらんになにか苦しかるへき
そも〳〵此度みかた蔚山の城をおとされすつゐに敵の
多勢をうちやふつて本朝の武功を外国にあらはせし
事ひとへに 此城の要害いみしきか故にあらすや
ましてや一たひかたきの地にふかく入てかまへたりし
要害をみつからすてゝ 引しりそかん事嘉明か心に
あらす嘉明たとへ人々の儀に同せさるによつて罪
かうふり首はねらるゝにも 悔ところにあらすといひ