翻刻
はしきものなり
一 駅舎(はたこや)へ到着(たうちやく)して第(だい)一に其地(そのち)の東西南北(とうざいなんほく)の方(ほう)
角(かく)を聞定(きゝさため)次(つき)に家作(やつくり)雪隠(せつゐん)裏表(うらおもて)の口々(くち〳〵)等を見覚(みおほへ)
置(おく)事(こと)古(ふるき)教(おしへ)なり近火(きんくわ)或(あるひ)は盗賊(とうぞく)又は相宿(あひやと)に喧嘩(けんくわ)
等(とう)ある時(とき)のためなり
一 道中(たうちう)初てする輩(ともから)馬駕籠(むまかこ)人足(にんそく)の用あらば宵(よひ)の
中(うち)に亭主(ていしゅ)にあひて頼むべし相たひにては途中(とちう)
にてこまる事あり帳面(ちやうめん)ある人は着(ちやく)したる時宿
のものへ渡(わた)し頼むへし扨(さて)明朝(めうてふ)何時(なんとき)出立(しゆつたち)と宵(よひ)
より宿へ申付 其(その)刻限(こくげん)に応(おほ)じ其間(そのま)にあふ程(ほと)に
自(みつから)起(おき)若(もし)宿屋(やとや)不(おき)_レ起(ざる)時(とき)は宿(やと)を起(おこ)し膳(ぜん)の用意(ようゐ)
する迄(まて)に支度(したく)をいたし草鞋(わらじ)をはく計(はかり)に
して膳(ぜん)に向ふべしさなければ人馬(にんば)の用意も
自然(しぜん)と等閑(なをざり)になりて手間取(てまとり)都合(つかう)あしき
なり旅(たび)にては貴賎(きぜん)ともに此(この)法(ほう)を守(まも)らされば
手廻(てまは)し悪(あし)しと知(しる)へし
一 朝(あさ)はせわしき故(ゆえ)持(もち)たるもの取落(とりおとす)ものなれは宵(よひ)に
よく取しらべ用(よう)不用(ふよう)の心組(こゝろくみ)をして風呂敷(ふろしき)に包(つゝみ)
取ちらさぬよふに心懸(こゝろがく)べし足袋(たひ)は床(とこ)の中(うち)にて
はくほとに手廻しせされば朝おそく成なり