翻刻
一 空腹(くうふく)なるとて道中(だうちう)にて飽食(ほうしよく)すべからず尤(もつとも)
取(とり)いそぎ喰ふへからず静(しつか)にくふべし至極(しごく)空(くう)
腹(ふく)になれば心(しん)疲(つかれ)て居(をる)故(ゆえ)飽食(ほうしよく)すれば忽(たちま)ちに
気(き)を塞(ふさき)又は急病(きうしやう)等を発(はつす)る事あり心得べし
一 空腹に酒飲へからず食後に呑べし尤 暑寒(しよかん)
ともにあたゝめてのむへし
一 道中にて焼酎(しやうちう)を漫(みだり)に飲(のむ)べからず中(あた)る人まゝ
あり上製(しやうせい)【左ルビ「よきもの」】のものあらば少々呑へし尤(もつとも)夏(なつ)のうち
霖雨(なかあめ)又は湿気(しつき)多(おほ)き土地(とち)なとにては焼酎(しやうちう)并 ̄ニ泡盛(あわもり)
酒(しゆ)等少々 飲(のめ)ば湿毒(しつどく)をはらふもの也然れ共 秋(あき)冬(ふゆ)
は呑べからす
一 空腹(くうふく)に風呂(ふろ)へ入(いる)へからず食後(しよくご)にても暫(しはら)く腹気(ふくき)
を和(くわ)して入べし去(さり)なから多勢(たせい)にて跡(あと)の差(さし)
支(つかい)になりて空腹にてもいらねばならぬ時は先(まづ)
足(あし)を度々(たび〳〵)湯(ゆ)にてぬらし其後(そのご)風呂(ふろ)に入べし
長湯(なかゆ)すべからず空腹には別而(へつして)湯(ゆ)げにあかる
ものなり心得有べし
一 相宿(あひやと)にて風呂(ふろ)へ入には宿(やと)の案内(あんない)次第(しだい)其上(そのうへ)
にて入事なれとも宿屋(やとや)取込(とりこみ)客人(きやくじん)の前後(ぜんご)を
取違(とりちかひ)等 有(ある)時(とき)はむつかし出来(でき)るものなれは