翻刻
又は山椒(さんせう)胡椒(こせう)の類(るい)はかならず懐中(くわゐちう)すべし
山中(さんちう)の気(き)をさけ湿(しつ)をさるものなりくわしくは
末(すゑ)の薬(くすり)の条にあり
一 夏(なつ)は旅人(りよじん)疲果(つかれはて)て道路(たうろ)に休(やすみ)或は草むらに
伏(ふし)眠(ねむる)人(ひと)あれども決而(けつして)せぬ事也 夏(なつ)の野原(のはら)に
は毒虫(どくむし)多(おほ)し譬(たとひ)毒(どく)なき虫にても毒あるものに
寄(より)触(ふれ)たる後(ご)に人をさせば其(その)毒(どく)気甚敷もの
なり且(かつ)古き宮寺(みやてら)の茂(しけ)りたる林(はやし)又は山中の巌(がん)
崛(くつ)等へそこつに入或は水辺(すいへん)湿地(しつち)等 涼(すゞし)きとて
長休息(なかきうそく)すべからず件(くたん)のやうなる処には毒湿(どくしつ)
きはめて有ものなり懼(をそる)へし
一 食後(しよくご)に道(みち)を必ず急(いそき)歩行(ほかう)すべからず又 馬駕(むまか)
籠(ご)に乗(のる)とても急速(きうそく)にすべからず若(もし)ころび又は
落馬(らくば)等をしても飯(めし)の喰立(くひたて)には腹内(ふくない)和さゞる
ゆえに気(き)を塞(ふさく)ことあり心得べし
一 大小便(たいしやうべん)のつまりたるをこらへて馬駕(むまかこ)に決而(けつして)乗(のる)
べからず落馬等せば心(しん)を突(つき)頓死(とんし)する事あり
一 人馬(にんば)の先触(さきぶれ)出(いだ)すならば出立(しゆつたち)の日より二三日
已前(いぜん)に出すへし左なけれは途中(とちう)にて一緒(いつしよ)に
なりて其せんなきものなり