翻刻
生(せう)じ大に手間取ものなり慎(つゝし)むべきなり
一 湯治場(たうじば)は硫黄(いわう)の気(き)多(おほき)故(ゆへ)大小の身(み)并 ̄ニ拵(こしらへ)等まても
錆(さび)るものなり其(その)用心有べし尤湯場にもより
さ様になき所もあれと多くはさびるものなり湯(たう)
治(じ)仕方(しかた)温泉(おんせん)の地名(ちめい)は末にくわし
一 主用(しゆよう)或は要用(やうよう)にて初て旅行(りよかう)する人 僅(はづか)の所にて
も回道(まはりみち)をして名所(めいしよ)旧跡(きうせき)等 尋(たつぬ)べからす且(かつ)しらぬ
近道(ちかみち)近 舟路(ふなぢ)等必すべからず
一 旅宿(りよしゆく)にて出火(しゆつくわ)ありて若(もし)近火(きんくわ)ならば早速(さつそく)立
したくいたし身(み)の廻りの大切(たいせつ)なる物を持(もち)除(のき)
其上にて風すじを見計ひ荷物等あらは取出
へし尤家来ある輩(ともから)は挑灯(てふちん)を付 持(もち)除(のき)もの等
差図(さしづ)いたし紛失物(ふんしつもの)等なきやう心付へし
右様(みきやう)の節(せつ)は宿(やと)をたよりにせぬ事なり
一 旅(たび)は相宿(あひやと)は有勝(なりかち)なるものなれとも手前(てまい)を能
用心(ようしん)すれば何事(なにこと)有(ある)ものにあらず第(だい)一に戸(と)じま
りを心付又 宵(よひ)より相客(あひきやく)の様子(やうす)を窺(うかゞ)ひ知べし
若(もし)酒乱(しゆらん)狂気(きやうき)等の人ある時は早速(さつそく)其用意すべし
相宿にて異変(ゐへん)有しこと其(その)例(れい)すくなからず
一相宿の中にて大 酒宴(さかもり)はじまり若(もし)深更迄(よふけまて)も