翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

旅行用心集 - 翻刻

旅行用心集 - ページ 32

ページ: 32

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 粉雪(こゆき)にてふらぬ日にても風に吹立(ふきたて)られて雪吹(ふゞき)  の如し況(いはん)や降(ふる)日には忽(たちまち)に一二尺つもるは暫時(ざんじ)  のこと也 依(これに)_レ之(よつて)道路(だうろ)人跡(じんせき)の目(め)あて更(さら)になし  公用(かうよう)の人(ひと)は雪踏人足(ゆきふみにんそく)を召(めし)て先々(さき〴〵)を案内(あんない)さ  すれども唯(たゝ)の旅人(りよじん)はそれもならず道(みち)問ふへき  人も稀(まれ)なり終(つい)に道(みち)を見うしなひて本道(ほんだう)に  出(いづ)ることあたはずして迷(まよ)ふ人まゝあり因而(よつて)雪(せつ)  中(ちう)の旅(たび)は譬(たとひ)上戸(しやうご)なりとも大酒(たいしゆ)決(けつ)してすべ  からす大酒(たいしゆ)すれは身(み)熱(ねつ)して雪吹(ふぶき)を事(こと)とも  せぬ心地(こゝち)になれども山野(さんや)の満雪(まんせつ)道路(だうろ)は勿(もち)  論(ろん)田(た)も畑(はた)もなく一面(いちめん)の平地(ひらち)となるゆへ酔体(すいたい)の  元気(けんき)にて方角(ほうかく)を失(うしな)ひ深(ふか)き溝洫(みそほり)に落入(おちいり)て  終(つい)にこゞえ死(しぬ)人(ひと)多(をほ)し夜分(やぶん)は別而(へつして)道筋(みちすじ)見へず  依(これに)_レ之(よつて)朝飯(あさめし)程(ほど)よくしたゝめ外(ほか)に中食(ちうじき)の焼飯(やきいゝ)を  貯(たくはへ)て空腹(くうふく)にならぬやうに心懸へし空腹なれば  厳寒(げんかん)に冒(おかさ)れて神魂(しんこん)気力(きりよく)も尽果(つきはて)て終(つい)に雪(ふ)  吹(ぶき)にあひ絶倒(ぜつたう)することあり故に酒に酔(よい)ざれば  たとひ雪吹(ふゞき)にしまかれて一夜を明すとも命(いのち)に  及(およ)ふ事なし奥越(をうゑつ)の人まゝ雪吹にあふて寒(こゝえ)  死(し)する人多く上戸(しやうご)にて大酔(たいすい)の上(うへ)なる由(よし)語(かた)れり