翻刻
味(あしわ)ひよきは相応(さうわう)したると知(しる)へし若(もし)一両度入
ても胸腹(きやうふく)はり食(しよく)の味(あぢわ)ひあしく不(すゝま)_レ進(ざる)は先(まつ)は不相応(ふさうわう)
としるべし是等(これら)の事は其(その)土地(とち)々々の湯宿(ゆやと)へ委細(いさひ)を
咄(はな)し其上(そのうへ)入湯(にうたう)すべし然ども二三日も入て見れば
おのつから様子(やうす)しれるものなり
一 湯治(たうじ)の仕方(しかた)ははじめ一日二日の中は一日に三四度
に限(かぎる)べし相応する上は五七度迄はくるし
からず老人(ろうじん)又は虚弱(きよじやく)の人は斟酌(しんしやく)あるべし又 多年(たねん)
の病(やまひ)は一 ̄ト回(まわり)二 ̄タ回にては不(いゑ)_レ治(ざる)ものあり故に三四回又は
一二月も入へし
一湯治中病人は勿論(もちろん)無病(むびやう)の人にても禁(きん)じ慎(つまし)む
べき物(もの)は飽食(ほうしよく)大酒(たいしゆ)房事(ぼうじ)冷(ひへ)たる食物(しよくもつ)等也又 湯(ゆ)
上(あがり)には惣身(さうしん)毛(け)の孔(あな)開(ひらく)ゆへ外邪(くわいしや)をうけやすし依(これに)_レ之(よつて)
深山(しんざん)の涼風(りやうふう)にあたり又は清水(しみづ)に足(あし)を冷(ひや)し或は
風(かざ)吹にうたゝねなと決而(けつして)すへからず平生(へいぜい)の外邪
よりも湯上りに受たるは別而(へつして)甚(はなはた)し慎むべし
一 温泉(おんせん)は熱(あつふ)して能(よく)澄(すみ)鑑(かゞみ)の如く底(そこ)まて明(あきら)かなるを
最上(さいじやう)とす温(ぬる)うして濁(にこり)り又は色(いろ)替(かわ)りたる湯は
下品なり然ども所により濁り色替りたる湯に
ても無毒(むどく)温順(おんじゆん)にして病に能(よく)利(きく)湯もあり一概(いちがひ)に