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門 正南(まみなみ)は朱雀(しゆじやく)門。南東(みなみひかし)は皇嘉(くわうか)門なり。去程(さるほど)に諸(しよ)職人(しよくにん)精根(せいこん)を尽(つく)し経営(けいえい)を急(いそ)
ぐ程(ほど)に十月に至(いたつ)て新内裡(しんだいり)成就(じやうじゆ)しければ。帝(みかど)御喜悦(ごきえつ)斜(ななめ)ならず。博士(はかせ)に命(あふせ)て
吉日(きちにち)良辰(りようしん)を卜(うらな)はせ給ひ。十二月二十一日 長岡(ながおか)の王宮(わうきう)を出(いで)給ひ。宇多村(うだむら)の新内裡(しんだいり)へ
遷幸(せんかう)なし給ふ。其(その)儀式(ぎしき)いと厳重(げんぢう)に伶人(れいじん)音楽(おんがく)を奏(そう)し百官(ひやくくわん)警蹕(けいひつ)の声(こゑ)豊(ゆたか)
に万歳(ばんぜい)を唱(となふ)る声(こゑ)揚々(やう〳〵)とし月卿(げつけい)雲客(うんかく)今日(けふ)を曠(はれ)と装(よそほ)ひて鳳輦(ほうれん)に随逐(ずいちく)し
君(きみ)を入御(じゆぎよ)なし奉りけるは芽出度(めでた)かりし御事なり。帝(みかど)新都(しんと)へ入御給ひて諸所(しよ〳〵)を
睿覧(ゑいらん)在(ましま)すに。殿閣(でんかく)門楼(もんろう)百(ひやく)工手(かうて)を尽(つくし)て。善(ぜん)尽し美尽(びつく)し。諸司(しよし)八省(はつせう)にいたる迄(まで)
荘麗(そうれい)を極(きはめ)けるにぞ。殊更(ことさら)に御感(ぎよかん)在(ましま)し卿相(けいせう)に詔命(みことのり)し給ふやう。抑(そも〳〵)此都(このみやこ)の地は
四 霊(れい)其所を得(え)山河(さんか)自然(しぜん)に城(しろ)を成(なせ)り因(よつ)て今より山背(やましろ)を革(あらため)て山城国(やましろのくに)と称(となふ)
べし。また末代(まつだい)皇孫(わうぞん)此都(このみやこ)に住(ぢう)せば。君(きみ)平(たいらか)に民(たみ)安(やす)かるべければ。平安城(へいあんじやう)と号(がう)す
べきなり。もし末代(まつだい)に悪王(あくわう)出(いで)て此都(このみやこ)を他所(たしよ)に遷(うつさ)【迁は俗字】んとせば即(すなは)ち悪王(あくわう)を誅伐(ちうばつ)すべき