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日枝山(ひえざん)の梺(ふもと)の神社(しんじや)に一七日 参籠(さんろう)し。丹誠(たんせい)を凝(こら)して一 子(し)を授(さづけ)給へと祈(いのり)けるに。其(その)誠(せい)
心(しん)を神明(しんめい)感納(かんのふ)し給ひけん。程(ほど)なく其(その)妻(つま)妊娠(にんしん)し。称徳(せうとく)天皇の神護景雲(しんごけいうん)元年(ぐわんねん)
丁未(ひのとひつじ)三月 男子(なんし)を生(うめ)り。是(これ)則(すなは)ち最澄(さいてう)なり。小児(せうに)の頃(ころ)より智才(ちさい)尋常(よのつね)の小児(せうに)に勝(すぐ)れ
七 歳(さい)より仏書(ぶつしよ)儒書(じゆしよ)に渉猟(せうれう)し。仏法(ぶつほふ)を慕(した)ひて十二才の時(とき)。大安寺(だいあんじ)の行表法師(ぎやうへうほふし)
を戒師(かいし)とたのみ。剃髪(ていはつ)して法名(ほふめう)を最澄(さいてう)と呼(よば)れ。唯識(ゆいしき)を学(まな)び華厳経(けごんきやう)。起信論(きしんろん)等(とう)
を学(まな)び究(きはめ)稍(やゝ)博識(はくしき)の聞(きこ)え高(たか)く。桓武(くわんむ)天皇の御 皈依(きえ)に預(あづか)り比叡山(ひゑいざん)を開基(かいき)し天台(てんだい)
宗(しう)の始祖(しそ)となりけるなり。最澄(さいてう)曽(かつ)て鑑真禅師(かんしんぜんじ)の伝(つたへ)たる玄義(げんぎ)。文句(もんぐ)。止観(しくわん)。四教義(しけうぎ)。
維摩経(ゆいまけう)の疏(そ)等(とう)を閲(けみ)して歓喜(くわんき)し。猶(なを)一 切衆生(さいしゆぜう)を化導(けどう)せんには。深理(しんり)明師(めいし)の伝授(でんじゆ)無(なく)
ては意(い)の如(ごと)くならじとて。入唐(につとう)の望(のぞみ)を起(おこ)し帝(みかど)へ歎奏(たんそう)しければ。即(すなは)ち勅許(ちよくきよ)ありて延暦(えんりやく)
二十一年 遣唐使(けんとうし)藤原葛野麻呂(ふぢはらのかどのまろ)の船(ふね)に。釈空海(しやくのくうかい)《割書:弘法(かうぼふ)|大師》とともに同船(どうせん)して唐土(とうど)へ
わたり。台州(たいしう)の天台山(てんだいさん)に登(のぼ)り国清寺(こくせいじ)の道邃法師(どうすいほふし)に相見(しやうけん)して一心(いつしん)三観(さんくわん)の玄旨(げんし)を