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翻刻
授(さづか)り且(かつ)菩薩(ぼさつ)三 聚(じゆ)の大戒(だいかい)を付嘱(ふぞく)せられ。其(それ)より天台山(てんだいさん)の西南(にしみなみ)仏隴寺(ぶつろうじ)の行満(ぎやうまん)
座主(ざす)に見(まみへ)て仏法(ぶつほう)の問答(もんだふ)ありしに。行満(ぎやうまん)大いに感じ。昔(むかし)智者大師(ちしやだいし)徒弟(とてい)に語(かたつ)て
曰(いはく)我(わが)滅後(めつご)二百 余歳(よさい)の後(のち)東海(とうかい)の国(くに)に生(むま)れ彼(かの)土(ど)に仏法(ぶつほふ)を興立(かうりう)せんと遺訓(ゆいくん)
有(あり)しと伝聞(つたへきゝ)しが。果(はた)して今 最澄(さいてう)三 蔵(ざう)を相見(あひみる)事よと悦(よろこ)びて六祖(ろくそ)妙楽大師(めうらくだいし)
より代々(だい〳〵)秘蔵(ひさう)せる経論(きやうろん)書巻(しよくわん)を惜(をし)まず尽(こと〴〵)く最澄(さいてう)に付与(ふよ)し。汝(なんじ)此(この)法文(ほふもん)を
日本(につほん)へ持還(もちかへ)り法灯(ほふとう)を挑(かゝ)け一 宗(しう)の祖師(そし)となるべしと示(しめ)されけり最澄(さいてう)其後(そのゝち)越州(えつしう)の
竜興寺(りうかうじ)へいたり順暁阿闍梨(じゆんけうあじやり)に対面(たいめん)して三 部潅頂(ぶくわんでう)の密教(みつけう)を受(うけ)又 唐興(とうかう)
県(けん)の沙門(しやもん)翛然(しゆくねん)に謁(えつ)して達磨(だるま)の一派(いつぱ)牛頭山(ごづせん)の法(ほふ)を受(うけ)伝(つたへ)られけり。素(もとよ)り最澄(さいてう)
日本にて行表和尚(ぎやうへうおせう)より北宗(ほくそう)神秀(しんしう)の禅法(ぜんほふ)を学(まなび)得(え)しゆへ翛然(しゆくねん)と問答(もんどふ)にて禅(ぜん)
の要義(ようぎ)を尋(たづね)求(もと)め頗(すこぶ)る領解(れうげ)する所(ところ)多(おほ)く悦(よろこ)ばれけり斯(かく)て其次(そのつぎ)の年 遣唐使(けんとうし)
帰朝(きてう)あるにより同船(どうせん)して出帆(しゆつはん)せられける。此時(このとき)空海(くうかい)は猶(なを)唐土(とうど)に留(とま)られけり。偖(さて)延暦(えんりやく)