Gallicaの日本資料を翻刻!

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ページ: 112

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宇(う)の寺(てら)を建立(こんりう)し。拾(ひらひ)得(え)たる毘沙門天(びしやもんてん)の像(ぞう)を安置(あんち)し。鞍(くら)置(おき)たる馬(むま)の知(しら)せし地(ち)なれ ばとて鞍馬寺(くらまでら)と号(がう)しける《割書:獅子頭(しゝづさん)とも|又松尾山とも云》然(しかる)に伊勢人(いせんど)思(おも)ひけるは。我(われ)多年(たねん)観音(くわんおん)の像(ぞう) を安置(あんち)せん志願(しぐわん)なりけるに。毘沙門天(びしやもんでん)の像(ぞう)を得(え)しを以(もつ)て一 寺(じ)を建立(こんりう)するといへ ども。いまだ旧(もと)の宿願(しゆくぐわん)を果(はた)さずと。心 満足(まんぞく)せざるところに。其夜(そのよ)の夢(ゆめ)に天童(てんどう)一人 出(しゆつ) 現(げん)し你(なんじ)毘沙門天(びしやもんでん)を得(え)ていまだ念願(ねんぐわん)を果(はた)さずと思(おも)へども。観音(くわんおん)と毘沙門(びしやもん)名(な)は 異(こと)なれども其本(そのもと)同一体(どういつたい)なれば。你(なんじ)が念願(ねんぐわん)已(すで)に満足(まんぞく)せりと告(つげ)るとひとしく夢(ゆめ)覚(さめ)たり 伊勢人(いせんど)是(これ)によりて疑心(ぎしん)忽(たちま)ち解(とけ)悦(よろこぶ)こと限(かぎり)なし。然(され)ども後日(ごにち)に別(べつ)に一 寺(じ)を建立(こんりう)して 観音大士(くわんおんだいし)の像(ぞう)を安置(あんち)しける。今 鞍馬寺(くらまでら)の西(にし)なる観音院(くわんおんいん)是(これ)なり。斯(かく)て後(のち)諸(しよ) 人(にん)鞍馬寺(くらまでら)の多門天(たもんでん)を信(しん)じ祈(いの)るに霊験(れいげん)灼然(あらた)なる事 響(ひゞき)の物(もの)に応(おふ)ずるが如(ごと)く祈(き) 願(ぐわん)として成就(じやうじゆ)せずといふ事なく。殊更(ことさら)富貴(ふうき)を与(あたへ)給ふ事 端的(たんてき)なれば貴賎(きせん)の参詣(さんけい)日(にち) 〱(〳〵)に絶(たゆ)る事なし。後年(こうねん)峰延法師(ほうえんほふし)とて勇猛(ゆうみやう)精進(しやうじん)の僧(そう)鞍馬寺(くら▢▢ら)【▢部は虫食い 注】に住侶(ぢうりよ)しけるに 【注 別本に「くらまでら」。】