Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 113

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其比(そのころ)後(うしろ)の山の溪間(たにま)に大蛇(だいじや)栖(すん)で時々(をり〳〵)寺僧(じそう)土民(どみん)を呑喰(のみくらひ)其(その)害(がい)に遭(あふ)者(もの)少(すくな)からざれ ば僧俗(そうぞく)とも大いに是(これ)を愁(うれ)ひける。峰延(ほうえん)此(この)妖㜸(ようけつ)を退(しりぞけ)んと六月廿日 後堂(こうどう)に於(おい) て大護摩(だいごま)を修(しゆ)せられけるに。日中(につちう)の比(ころ)暴風(ぼうふう)俄(にはか)に吹起(ふきおこ)り北嶺(きたのみね)より件(くだん)の大蛇(だいじや)岩(いは)を 動(うごか)し樹(き)を仆(たを)して出来(いできた)りぬ。其(その)体(てい)眼(まなこ)は鏡(かゞみ)の如(ごと)く紅(くれない)の舌(した)は火焔(くわゑん)に一般(さもに)たり。侍者(ぢしや)の 僧(そう)大いに駭(おどろ)き恐(おそ)れ師(し)を捨(すて)て逃走(にげはし)り仆伏(たをれふす)。峰延(ほうえん)些(ちつ)とも動(どう)ぜず頻(しきり)に毘沙門天(びしやもんでん) の真言(しんごん)を誦(じゆ)せられければ不思議(ふしぎ)や一天に黒雲(くろくも)群(むらが)り起(おこ)り怒風(どふう)砂石(しやせき)を吹捲(ふきまく)と ひとしく彼(かの)大蛇(だいじや)忽(たちま)ち叚々(ずだ〳〵)【注】に斬(きら)れて死(し)したりけり。其後(そのゝち)諸人(しよにん)馳(はせ)集(あつま)りて見るに。血(ち)は 流(なが)れて河水(かはみづ)のごとく切(きら)れし肉(にく)は岳(おか)の如(ごと)し。是(これ)偏(ひとへ)に峰延和尚(ほうえんおしやう)の行力(ぎやうりき)にて毘沙門天(びしやもんでん) の威(い)神力(じんりき)を顕(あらは)し玉ふところなると。諸人(しよにん)感(かん)じ怡(よろこ)びける。偖(さて)土人(どじん)四五十人 寄(より)大蛇(だいじや)の 死肉(しにく)を静原山(しづはらやま)へ運(はこ)ひ棄(すて)けり。それより其地(そのち)を大虫峰(おほむしのみね)とぞ称(せう)しける。今にいたる まで六月廿日に竹切(たけきり)といへる行事(ぎやうじ)を修(しゆ)するは彼(かの)大蛇(だいじや)を斬(きり)し遺意(いい)也(なり)とかや 【注 「段々」の誤記ヵ。別本に「段々」とあり。】